俺の右手にぐるぐると包帯を手際良く巻いていく吉継の手。
それをぼうっと見つめていると、包帯の締め具合が強くなりずきりと右手から痛みを感じた。

息を飲んで反射的に引っ込めようとするがそれは吉継によって阻まれる。
さらに包帯を巻いていた手を止めぎゅっと握られ、それがモロに右手の傷に響いて思わず呻いた。

「いっ、つ」
生理的な涙が出そうになるのを堪えていた目の前の吉継を睨むと、にこりと微笑まれた。
「どうした?」
そして何事もないかのようにそう問うてくる。

「っ、手…痛ぇんだけど」
「我慢しろ」
「傷…開く、だろ」
「開いたら当分馬鹿な事はしないだろう?馬鹿につける薬の代わりだよ」

そう言って吉継は俺の顔に手を伸ばした。顔に残る二つの傷の中で、既に瘡蓋を作っている方に触れられる。
右手と一緒にできたその傷痕をそっと撫で「馬鹿者」と怒った顔になった。

「熊と素手で戦うなんて、阿呆かお前は。何でそんな事したんだ」
「……むしゃくしゃ、してたんだよ」
「むしゃくしゃだ?何に」
呆れたように言う吉継はまさか自分が原因だとは思っていないだろう。
喉まででかかった「おめぇだよ。原因はよ」という言葉を必死に飲み込んだ。
言った後の反応が怖い。
言葉を濁して答えると吉継は溜め息を一つ。瘡蓋から手を外して反対側の頬の傷に手を伸ばした。

この傷を作ったのは目の前のこの男だ。

熊と戦った後傷だらけで帰ったらいきなり殴られた時の傷。
そのまま腕を引かれて吉継の部屋に連れてこられて今に至る。
まだ生乾きのその傷を触られて頬にぴりりとした痛みが走って顔を顰めた。

「男前になったじゃないか」
そう言って撫でる吉継の表情に反省の色はない。
謝罪はおろかそもそも何故殴られたのかの理由も聞かされず、何となく気分が悪かった。

「何で俺殴られたんだ…?」
思いきって尋ねてみると、「戦でもないのに傷を作ってきたからだ」と返される。
意味が分からない。
そう言うと
「馬鹿だな」
と呆れ顔をされた。
そして吉継はするりと耳の後ろを撫でた後、顔を反対側の俺の耳元に近付け、

「お前は俺のものだろう?だからこれは俺のものを傷付けたことに対する罰なんだよ」

そう低く呟いて笑った。






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