芥川龍之介作品*た行

芥川龍之介作品 * た行


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た 行 作 品 一 覧 表
煙草と悪魔(たばことあくま)
(ちち)
忠義(ちゅうぎ)
偸盗(ちゅうとう)
道祖問答(どうそもんどう)
なし


煙草と悪魔(1巻174〜186頁)
――では、あたらなかったら、――あなたの体と魂とを、貰いますよ。

煙草は悪魔が持ってきたという伝説がある。悪魔は天文十八年、フランシスコ・ザビエルの供の、伊留満のひとりに化けて日本に来た。が、ザビエルも日本に来たばかりで伝道も盛んにできないから誘惑する人間もいなくて悪魔は大変暇だった。そこで暇つぶしに園芸で煙草を育ててみることにする。自分で畑を耕し、種を蒔く。そのうちに花が咲いた。ある日ひとりの牛商人が、その花は何か、と尋ねてきた。悪魔は当ててみろ、もし三日のうちに当てたらこれを皆やると答えた。では当たらなかったら?と、牛商人が訊くと、悪魔は、あなたの体と魂を貰うと答える。牛商人は焦った。牛商人は約束の日が来る晩に牛を引っぱっていって畑を荒らさせ、結局花の名前まで知ることができた。しかし自分(語り手)は、この物語にはもっと深い意味があるのではないかと思う。悪魔は体と魂を得ることはできなかったけれども、煙草を日本中に広めることができた。牛商人の成功が堕落を伴っているように、悪魔の失敗も成功を伴っているのではないか、と。人間は誘惑に勝ったつもりでも負けているときがあるのではないか。
(1巻81〜88頁)
「君、父母に孝に、」――自分はその悼辞の中に、こう云う句を入れた。

自分(芥川本人)が中学4年だったときの話。修学旅行の集合場所である停留所へ行くのに、電車に乗っていると、能勢五十雄に会った。彼は他人を笑わせることを得意としている。そして停留所に着いて全員が集合するのを待っている間、彼は待合室にいる人々を辛辣に、しかし諧謔に富んだ物言いで形容して見せた。皆笑う。ある者がひとりの男性の形容を能勢にせがんだ。それは能勢の父であった。自分はそれを知っていて、その時そのように云いそれを止めようとした。けれども能勢は自分の父を「ロンドン乞食」と評する。また皆笑った。自分が能勢の父を見たときそれまで曇っていた空から光の帯が降りる。能勢の父はその中で、多くの行き交う人と声の中でただ一人動かずに息子の乗る電車の時刻を調べていた。
忠義(1巻242〜268頁)


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偸盗(1巻289〜378頁)
人間の苦しみを忘れた、しかもまた人間の苦しみに色づけられた、うつくしく、傷しい夢である。

偸盗団に属している侍の太郎は、頭である砂金に恋をしていた。一方太郎の弟である次郎も砂金を恋うていた。当の砂金は多くの男を相手にする軽い女であった。兄は隻眼のために自信がなく沙金が弟に奪われると思っている。そして、そうなれば敵となって殺しあわなくてはならなくなると思っている。弟は弟で自分の不義を後悔し、兄に殺されるなら本望とまで思っている。そんな次郎に、ずる賢い沙金は、太郎をだまして殺すことを持ちかける。
道祖問答(1巻236〜241頁)


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