芥川龍之介作品*ら行

芥川龍之介作品 * ら行


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ら 行 作 品 一 覧 表
羅生門(らしょうもん)
老年(ろうねん)


羅生門(1巻52〜62頁)
「では、己が引剥ぎをしようと恨むまいな。己もそうしなければ、餓死をする体なのだ。」

羅生門の下で雨やみを待っている男がひとりいた。下人である。彼は四五日前に暇を出され途方に暮れているのである。生きていこうにも当てがない。盗人になる勇気もない。とりあえず眠りにつこうと思って門の上に上がってみた。するとそこには多くの死体と共に猿のような老婆がいた。彼女は死体の髪の毛を抜いていたのである。下人の心の中に正義の心が芽生えた。そうして、老婆に行動の理由を問えば「生きるために仕方のないことなのだ」と答えた。それを聞くと下人の中に突如盗人になるという勇気が生まれた。下人は老婆の服をむりやり剥ぐと、それを抱えて闇へと消えていった。
老年(1巻9〜16頁)
ひとり、なまめいた語を誰に云うともなく繰り返しているのである。

橋場の玉川軒という茶式料理屋での出来事。そこで行われる一中節の順講には多くの人が集まった。小川の旦那や中洲の大将などである。料理屋の楽隠居に房さんという人がいる。この人は昔大層な遊び人で通った人であったが、最近はめっきり老け込んでその名残もない。しかし、旦那や大将が話をせがむと幾つかの文句を三味線に合わせて言ったりもする。人々はその老けっぷりに驚く。しかし、旦那と大将が用足しに立って廊下を歩いていると、どこからか房さんが女を口説く声がする。「やはりまだ隅には置けない人だ」と覗き込めば、房さんは猫を相手に語っているだけであった。
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