芥川龍之介作品*か行

芥川龍之介作品 * か行


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か 行 作 品 一 覧 表
煙管(きせる)
孤独地獄(こどくじごく)


煙管(1巻187〜202頁)
彼はそれを懐中から出して、鷹揚に口に啣えながら、長崎煙草か何かの匂いの高い煙りを、必ず悠々とくゆらせている。

金沢城城主・前田斉広は、参勤交代で江戸に登る際、必ず愛用の金でできた煙管を持っていった。加賀百万国が形となった煙管に、皆の注意が行くのが斉広には気持ちが良かった。ところで、その煙管を一番気にするのはお坊主の階級であった。しかし彼らは煙管が金だということで、とても拝領したいなどとはいえない。そこを河内山宗俊は違った。彼は斉広の元にいって、煙管を拝領したいといってみせたのだ。斉広は斉広、で拒んでケチなどと思われたくはないという思いがあったので、宗俊に煙管を渡してしまった。これを聞いて慌てたのは前田の家臣である。3人の役人たちは、お坊主がつけあがって煙管を拝領しに来ないよう、煙管をまず銀で作らせた。すると金より身近になったからか、余計に坊主がたかりにくる。そこで今度は真鍮で作らせた。ただし、斉広が金で作れというから、金に似せてである。すると初めは金だと思って宗俊が寄ってきたが拝領してから真鍮だと判り、もう寄りつかなくなった。それから家臣は斉広の煙管を金に戻した。人が寄りつかなくなって斉広も煙草が美味くなくなった。百万国の勢力が煙になって消えていくような気がしたからだ。
孤独地獄(1巻75〜80頁)
昔は苦しみながらも、死ぬのが嫌だった。今では……

自分が母より聞いた話である。自分の大叔父の知り合いに津籐という男がいた。その津籐がある日吉原の玉屋に行って、禅超という僧侶にあった。酒は呑むし女とは遊ぶしで表向きは出家ではなく医者だということになっていた。そして、ふたりが仲良くなったある時、禅超の様子がおかしい時があった。禅超が言うのは、自分は孤独地獄に堕ち何をやっても興味を持てない。苦しみを忘れるような生活をしているが、この先忘れられないとすれば死ぬしかない。昔は苦しいながら死ぬのも嫌だった。しかし、今では・・・・。その後禅超は姿を消した。これは江戸の頃の話である。私は江戸に興味のない人間だ。しかし、禅超に同情をしたくなる。自分もある意味孤独地獄に苦しめられているひとりだからである。
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