芥川龍之介作品*アルファベット

芥川龍之介作品 * アルファベット


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ア ル ファ ベ ッ ト 作 品 一 覧 表
MESURA ZOILI
なし


MESURA ZOILI(1巻203〜212頁)
測定器の正確を否定するか、彼等の作物の価値を否定するか、どっちにしても、難有い話じゃありません。

僕は船のサルーンの真ん中に変な男と向かい合っていた。その口髭の濃い顎が角張った男は新聞を読んでいる。そして退屈だといった。僕は同意した。男はなおも「ZOILIAの土を踏むには時間がかかる」という。僕の聞いたこともないような地名であった。男がいうには、ゾイリアとは相当な文明国で、芸術的な価値が測定できる価値測定器なるものもあるらしい。ゾイリアに輸入される日本の物はあまり成績が良くないのだそうだ。そんな話をしているとボーイが新聞を持ってきた。新聞には先月出た小説の価値が載っていた。僕の書いた『煙管』も載っている。あまり芳しくない評である。そのうち僕には疑問が生まれてきた。評価が確かだとどうやって決めるのだろう。男は、傑作を乗せてみれば判ると答えた。また、ゾイリアの芸術品を測定するのかと訊けば、法律で禁じられているという。もし最低値を示したとき、測定器の価値を信じればいいのか、芸術品の価値を信じればよいのか判らないからである。その時ふいに船が揺れた。僕は目を覚ます。夢を見ていたのである。読んでいた本は、「批評家」という脚本であった。
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