銘の無い墓標は、 舞い散る桜の下に、淡く。 墓碑銘 // (御月薫さま/ルルシェ) 陽のあたる小高い丘の上で、 彼女は、泣いた。 「…何年経ったのかしらね」 真っ黒い、墓碑。 そのつるりとして、端正なつくりの墓碑には銘が無い。 小高い丘の上、ただひとつだけ存在するその墓碑には銘が無いのだ。 墓碑と、桜樹と、剣。 そうして、ひとりの女。 喩えるのなら蒼で、喩えるのなら風。 抜き身の剣が墓碑の脇には突き立ててある。 漆黒の凛とした輝きで彼を思い出させるその剣は、銘の代わりにと魔王と呼ばれた天使が立てた。 主を失い、きっともう二度と剣は使われる事は無いんだろう。 闇の継承をされ得ずにして、輪廻は閉じたのだから。 彼女は蒼い髪をなびかせて、薄く笑った。 空に流れたそれは、きらきらと陽のひかりを返す。 ぱさり、と散る髪を押さえた彼女の手は少し、ほんの少しだけ、震えている。 薄く浮かべた笑みは、変わらないのに。 片手に提げたバスケットが、とさりと地に落ちた。 海のようにあたたかで、風のように軽やかで。 そう言われた遠くない昔が懐かしい。 彼女は小さく、微かに憂いを秘めて笑う。 「…答えなさいよ、バカ」 くすくすと、少しばかり楽しそうに。 舞う桜のひとひらひとひらを目で追いながら。 ひらりひらり、舞う度に。 つきりつきり、痛む胸。 思い出に浸れば浸る程思い知らされる、現実。 もう過ぎ去ってしまった事なのだと。 二度と、還らないのだと。 銘を刻まないのは、彼女の強い意思。 「貴方、今日は誕生日じゃない」 彼女は、笑って拾い上げたバスケットから琥珀色をしたワインの瓶を取り出した。 とぷんと水音を立ててそれは墓碑の前に掲げられる。 硝子越しに映る墓碑は、どこか夢のもののようで。 彼女は、やはり笑うのだ。薄く、淡く。 桜のはなびらに包まれて、まるでそれは幻想。 「好きだったでしょ?」 今開けるわ、そう言ってゆっくりとした手取りでコルクを抜く。 手馴れたものだ。 もう、何年。 毎年、毎年。 桜の咲く頃になると、彼女はこの丘に出掛ける。 手には銘を持たぬ墓碑への贈り物を持って。 とく、とく、とく。 墓碑にそのままワインをかけてやる。 甘く、だけれどもほのかに苦味を持った香りが風に乗る。 それはどこか、似ているのかも知れない。 「…誕生日、おめでとう」 静かに呟いた言葉は、はなびらと共に風に流れて。 銘の無い墓碑に縋り付くように、彼女は泣いた。 fin シェルルですが。 うん。何か違いますよね。(駄目) あー…取敢えずシェゾ死んでます。(ぅあ) 過去にルルーが救われて、そうして彼は死んでしまった。 そんなカンジでアリキタリだったりする上に文章がヘヴォです。はい。ごめんなさい。 乱筆乱文失礼致しました。 でわ。 |