なみだの水玉





 その日は雲ひとつない青い空が広がっていたのに、おれの特等席はどしゃぶりだった。




「ふぁ〜、…ねみぃ」

 せっかくのいいお天気だから、授業でもサボッておれのお気に入りのお昼寝スポットで寝ようと来てみたら、そこにはもう誰かが座っていた。おれのお気に入りの場所なのに…と思いながらも近づいてみると、そこに座っていたのは─────おれのだいすきなちゃん!

ちゃ」
「ジローちゃ、ん」

 おれが声をかけて、振り向いたちゃんは目を真っ赤にしてなみだをポロポロとこぼしていた。シャツやスカートにいくつもの丸いしみがあって、ちゃんがたくさん泣いていたのがわかる。
 うつむくちゃんの前におれは座った。

ちゃん…どうしたの?」
「なんでも、ないの」
「でも、泣いてる」

 ちゃんはふるふると頭をふって、またひとつなみだを落とした。なみだが、ぽつんとちゃんのスカートにしみこむ。

ちゃん、いっぱい泣いて」
「え…?」

 おれの言葉に、ちゃんは顔をあげた。少し驚いているようだったけど、さっきと変わらずちゃんのなみだはぽつん、ぽつんとシャツに、スカートにしみこんでいく。

「かなしいことのぶんだけ、いっぱい泣いて」
「いっぱい?」
「そう。残しちゃだめだよ」
「っ、」

 そうしておれはちゃんのなみだに口付けた。ちゃんのなみだがおちて、またちゃんにしみこんでしまわないように。
 驚いたちゃんは、おれの肩をおした。それでもまだ、こぼれるなみだ。またひとつ、ちゃんのシャツに、スカートにしみこんでいく。おれはちゃんの手をにぎった。

「かなしいことは、ぜんぶなみだになって流れるんだよ」
「ジローちゃ」
ちゃんのかなしいことは、ぜんぶおれにしみこませて」



 なみだがちゃんにしみこんだら
 またかなしいのがちゃんに戻っちゃう

 ちゃんがまたかなしくならないように
 ちゃんのかなしみは、ぜんぶおれにしみこませて



 おれはまたちゃんのなみだに口付ける。ちゃんはおれの手をぎゅう、と握った。

「そしたら…ジローちゃんが悲しくなっちゃうよ」
ちゃんがいれば、おれはかなしいのなんてへっちゃらだよ」



 だから、ねぇおれのだいすきな笑顔はやく見せて?






20070715
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