dumb bunny





「あっ!」

 突然声を上げて、私が指を差した方に顔を向けたブン太を見て、私は緩む口を開いた。

「バッカが見る〜!」
「なっ……テメ!」

 悔しそうに私を睨むブン太を見て笑い声を漏らせば、次の瞬間にはその声が悲鳴に変わった。

「ちょっ…なにしてんの!?」

 ブン太の後ろを差していた指に、ブン太が噛みついたのだ。
 噛んだと言っても歯が当たっている程度で痛みはない。けれど、そういう問題じゃない。

「おふぁえがわふいんふぁろ!」
「バカじゃないの、離してよ!」

 指を咥えたままで喋るブン太はそう簡単に話す気がないのか私の手首をがっちりと掴んでいた。教室にいるクラスメイトの視線が、痛い。

「ブン太ごめん、私が悪かったから離して」

 こんな仕返しをされるなら、バカみたいなことするんじゃなかったと思って見ても、当の本人は逆にこの状況を楽しんでいるのか笑って私を見ている。

「ブン太ぁ〜……におちゃん起きて、ちょっと助けて!」

 空いている方の手で寝ていたにおちゃんの頭を叩けば、眠そうな声で文句を言わてしまった。

「なんじゃあもう、寝とるのに」
「ブン太がバカなことやって離してくんないの」
「今に始まったことじゃないじゃろ」
「そうだけど」
「どういう意味だそれ!」
「あっ────もう!」

 私とにおちゃんの言い分が気に食わなかったのか、ブン太は一度指を口から離して怒ったのだけれど、手首はがっちりと掴んだままで一言言ってすぐにまた指に噛り付いてしまった。
 なにこれ、なんなのもう、なんの意味があるのこれ。

「もーブン太いい加減にしてよ」
「お菓子でも奢れば離すじゃろ」
「購買で新発売の立海アイスが食いたい!」
「ちょっ────もう!」

 一度口を離して言いたいことだけを言って再び指を口に入れるブン太に、最早羞恥ではなく呆れを感じる。

「あ、それいいのう。オレも食いたい」
「いや、におちゃんは自分で買っ────ちょっと!?」

 なんで私が二人分も、と思えば、におちゃんが私の空いていた方の手を持ち上げて指を口に含んだ。
 騒がしさが増した教室に集まる視線、一気に汗ばむ体に、アイスが食べたいのは私のほうだ。

「買う!買うから!早く購買行こう!」

 しっかりと握られた手首はびくともせず、逃げられない状況に涙目になりながら声を上げても二人は楽しそうに私を見ているだけだった。
 もう絶対この二人にイタズラなんてしない、と私は誓った。


 ────────誰か助けてよ!






20130104
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