trap a trap





「あっ!」

 突然声を上げて、私が指を差した方に顔を向ける景吾を見て、私はにんまりと笑った。

「バッカが見る〜」

 まさか景吾がひっかかってくれるとは思わなかった私は、それはそれは満足だった。
 笑いを含んだ私の声に、無言で顔を元に戻した景吾の表情は不敵なもので、細めた目が苛立ちを表していたけれど、そんな顔をしたって今回の”勝ち”は私だ。いつもいつも私の先手、上手を行く景吾に何か仕掛けて勝ってやりたかったのだ。こんなくだらないことに勝ってどうする、と言われればそれまでだけど、こんなにくだらないことだからこそ余計に、騙された景吾はイラッときてるんじゃないかと思う。
 そんな目で見咎められたって、私の口から漏れる笑いは止まらないのだ。
 すると景吾が手を上げ、私の背後を指差した。

「ホラ、見てみろ」
「その手にはひっかかりませーん」

 笑って返せば、景吾は鼻で笑った。
 今自分がやったことにひっかかるわけがないのに、鼻で笑うのは私の方でしょ?
 なんて、景吾の反応に若干ひっかかるものを感じていると、景吾は「バァカ」と言った。

「え?──────ん」

 持ち上げていた手で私の顎を掴み、一度も悔しそうに歪まなかったその唇が、私の唇に触れた。離れた唇はそれはそれは満足気に口角を上げていて、一気に騒がしくなった教室内で景吾が紡いだ二度目の「バァカ」は、きっと私にしか聞こえていなかっただろう。

 ──────────結局また私の負け!







20130104
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