お揃いほっぺ





「どうしたの?」

 朝、教室に入ってきた景吾の頬は赤らんでいた。この季節、いくら外が寒いからって車登校の景吾が頬を赤くして来たことなんてなかったのに。初めて見るものに私は驚きと興奮を隠せなかった。だって、ちょう可愛い…!

「ア゛ァ?」
「機嫌…悪いね」
「あァ、最高な気分だぜ」

 どうやら最高に気分が悪いらしい景吾は私の隠しきれなかった驚きと興奮を読み取り、更に気分を害したようだった。それでも私は初めて見る光景に質問せずにはいられなかった。

「ほっぺどうしたの?」
「俺が今最高に機嫌が良いのが分かんねぇのか?」
「わかるけど…」

 無言でジロリと私を睨んだ景吾。あぁ、その“ほっぺが赤い”ということが最高に機嫌が良い理由なの?でも――

「なんか照れてるみたいで可愛い」
「ア゛?」
「あっ、いや、なんでもない!」
「お前、手だせ」
「手?」

 景吾の機嫌が悪い原因だというのに、うっかり口に出してしまい更に機嫌を悪くさせてしまったかと思いきや、うまく誤魔化せたのか眉間の皺が深くなることはなかった。けれど、手を出せと言われて素直に出した私の手を握って、景吾は眉間の皺を深くしてから私の手をポイッと離した。

「相変わらずの冷え性だな」
「外から来たばっかだから余計ね。ていうか景吾も手すごい冷たいね」
「…雪玉ぶつけてやったんだよ」
「誰に?」
「忍足と向日」
「景吾も雪遊びとかするんだ」
「誰がするかよ、あいつ等が遊んでた雪玉が俺の顔に当たったんだよ」
「だからほっぺ赤いのね」
「百倍返しにしてやったけどな」
「でも景吾が雪玉よけれなかったなんて意外」

 ………………しまった。
 どうやら私は地雷を踏んでしまったようで、凍てつくような景吾の視線が私に突き刺さっていた。この場合、ごめんなさいで済んだためしがなかったような…。私は目を逸らしたい気持ちをこらえて笑った。目を逸らしたい、というか逃げたい、かも…!

「あ、朝だもん、誰だって反応にぶるよね!私なんて朝じゃなくてもよけられないもん!」
「前にお揃いが良いだとか言ってたよなァ?」
「え?おそろい?」

 どうして今いきなり“お揃い”の話が?確かに、お揃いのものが欲しいなぁって言ったことはあったけど。でも、なんで今?私に問いかける景吾の微笑みがこわい。

「言ってたよな?」
「言って、たけど…え?なんで今」
「望み通りにしてやるよ」
「っ、つ」

 急に両頬に冷たさを感じて目を閉じた。何をされるのかと思えば、いきなり両頬を景吾の冷え切った手で包まれたようだった。

「つ、めたっ!」
「お揃いにしてやってんだよ」
「おそろい、ていうか」

 今のこの状況は景吾に頬を包まれたというより、挟まれたと表現した方が正しかった。ぶに、という音がしたのではと思うほど私の頬はつぶされ、不可抗力で唇はタコのように突き出している。

「はじゅ、恥ずかしいから早く離してよっ、冷たいの分かったから!」

 私の頬も、雪玉が当たって赤くなった景吾の頬と同じように冷やして赤くして、それでお揃いにするという意地悪なんだと思うけど。それよりも私は今の自分のひどいことになっているであろう顔が恥ずかしくて、じっとしていられなかった。

「はやくはなしてってば!」
「冷たい手で触ってるっつーのに、なんでお前の顔はだんだん茹であがってくんだよ?」

 してやったり顔で笑われて、私は更に顔を赤くするしかなかった。ここまで計算済みですか!確かに景吾とお揃いのほっぺだけど…!
 お揃いどころか、景吾以上に顔が赤くなるのを感じながらブサイクになっているであう自分の顔を想像してテンションが下がった。けど…頬を赤くした景吾が楽しそうに笑うから、いっか。


 お揃いのほっぺをありがと







20091216
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