輪唱するメロディ





「ねぇねぇ」

 まだ廊下も少し騒がしくて、人もまばらな放課後の教室。今日日直の私と英二は二人で日誌を書いていた。と言っても、ほとんど私が書いているんだけど。暇になってきたのか、持っていたシャープペンで英二は私が文字を書く手をつつきながら声をかけてきた。

「ん?」
「今さあ」
「うん」
「女子の間で好きな人の着信音“森のくまさん”にするの流行ってるってマジ?」
「あー…なんか両想いになれるらしいね」

 そう答えながら私は内心冷や汗で、平静を装うのに必死だった。
 なんで!?女の子の中でこっそり流行っていたはずなのに、なんで英二が知ってんの…!?

「へぇ〜俺もやってみよっかにゃ〜」
「しょーもない噂だけどねー」

 しょーもない噂、と言いつつ実は私の携帯の英二からの着信音は森のくまさんだった。
 お前もやってんの?とか聞かれたらどうすればいいの!?やってるわけないっしょーって笑えば誤魔化せる?今も平静を装えてるよね、大丈夫だよね!?それよりも「俺もやってみよっかにゃ〜」って何!?英二も両想いになりたい相手がいるってこと…だよね?
 やっぱりただのしょーもない噂だったんだ…私が着信音を森のくまさんにしたのだって意味がなかっ…
 ――――♪♪

「わあ、マッジで!」
「え?」

 ぐるぐると考えていたら突然森のくまさんのメロディが響いた。いつのまにか英二が携帯を握っていたので、英二の携帯から鳴っているのかと思えば、チラリと視界に入った携帯の画面には発信中という文字と共に私の名前が表示されていた。

「にゃ〜んだ俺のこと好きだったの!」
「っえぇ!?」

 英二の携帯画面、英二の発言、森のくまさんが鳴り響いている私の携帯。
 …なんでマナーモードになってないの!?ありえない展開に心臓は爆発寸前で頭はパニックだった。待って待って待って、なんて誤魔化せば良いの!?こんな流れで私の気持ちが英二にバレるとか困る!どうすれば良いの!?ていうか、とりあえず止まれ森のくまさん!
 慌てて携帯を取り出せば、ボタンに触れる前に着信音が止まった。

「ち、違うから、今のはっ」
「えぇ〜違うの?」
「違うの!」

 何がどう違うと言うのだ。けれどあまりにも平然と英二がそう聞いてくるもんだから、なんだか「違うの」だけで乗り切れそうな気がして私はただ違うのと繰り返して顔を横に振った。すると英二は納得したように「そっかぁ〜」と笑った。
 え、納得してくれた…?うまく誤魔化せた…?

「やっぱ、しょーもない噂かぁ」
「え?」
「ちょっとかしてねん」

 そう言って英二は私の手から携帯を取り、ボタンを押してから私に画面を見せた。私の携帯の画面には、発信中の文字と英二の名前。そしてもう片方の手で自分の携帯を持って私に画面を見せた。そこには着信中という文字と私の名前と…

「俺のは違わないよん。森のくまさんは好きな子からの着信音!」

 私の心臓は爆発しました。







20090717
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