もしもし私が死んじゃったらどうする?






今すぐアイスを食べたい私が、電話をしたら。貴方はなんて答えてくれるかしら?







山崎退の場合

『あ、もしもし退ちゃん?』
「ごめん、今見張り中だから後でにしてもらっていいかな」
『ダメ、今すぐ』
「…何の御用でしょうか」
『アイスが食べたいので今すぐ買って来てください』
「あのさ、俺の第一声聞いてた?見張り中だって言っ」
『もし、ね?』
「え?」
『もし、今すぐ買って来てくれなきゃ私が死んじゃうとしたらどうする?』
「ハァ?なにそ」
『どうするの?』
「そんなん…買ってくに決まってんじゃん」
『死んじゃう!』
「ハ!?え、もしもの話って、オイ!電話切ってんじゃねェェエエ!」

 大声を出したせいで俺は見張り相手に気付かれ、土方さんに半殺しにされた。その上、彼女からは「死んじゃうって言ったのに遅い!薄情者!」と買って行ったコンビニアイスを受け取ってもらえず高級アイスを買わされた。え、なに?死んじゃうのって、むしろ俺じゃね?







近藤勲の場合

「もしもし近藤さん?」
『悪い、今から大事な会議なんだ。終わったら掛けなおすな』
「だめ、今すぐ」
『え、急用?どうした?』
「アイスが食べたいので今すぐ買って来てください」
『あの…俺これから大事な会議があるんだが』
「ねえ近藤さん、もし、ね?」
『うん?』
「もし、今すぐ買って来てくれなきゃ私が死んじゃうとしたらどうする?」
『え!?死んじゃう!?』
「そう、もし私が」
『今すぐに行く!!──────オイ、トシ!緊急事態だ!』
「…えっ、ちょっと待って“もし”って…もしもし!?」

 そうして血相を変えて大量のアイスを抱えながら屯所に帰って来た近藤さんと、事態を全て把握しているのか青筋をこれでもかと額に浮かべている土方さんに、私は本当に死ぬしかないな…と思った。







沖田総悟の場合

『もしもし総悟?』
「……」
『もしもし?』
「うるせーな、昼寝の邪魔すんな」
『昼寝って…じゃあ調度いいや、アイスが食べたいので今すぐ買って来てください』
「俺に仕事をサボらせる気ですかィ?」
『既にサボッてる人が言うセリフですか。ねえ、お願い〜』
「俺をパシろうだなんて百万年早えーんでさァ」
『今すぐアイス買って来てくれなきゃ死んじゃう!』
「死因は?焼死?爆死?水死?ショック死?凍死?餓死?感電死?斬殺?絞殺?窒息死?」
『えっ…ちょ』
「オススメは斬殺ですねィ。俺の愛刀でちろちろと斬ってってやりまさァ。少しずつ増えて行く痛みに悶えながら迫る死に怯える表情はさぞ美しいでしょうねィ」
『え゛』

 ブツリ、と切れた電話に俺は鼻で笑った。“私が死んだら”なんて言って、俺が釣られるとでも思ってるんですかねィ?残念ながら──────俺は釣られやすぜ。







坂田銀時の場合

『もしもし銀ちゃん?』
「あー俺これから仕事」
『嘘つき、パチンコしようとしてるでしょ』
「してねーよ!真面目に仕事しようとしてる銀さんになんてこと言うの!?」
『パチンコ店のガンガンかかってる音楽が聞こえたり聞こえなかったりしてんの!自動ドアの前にいるでしょ!』
「鋭すぎんだろコナンかお前は!つーかたまたま前を通っただけですゥ!──────銀さん入らねーの?」
『あらあら長谷川さんの声まで聞こえてきてますけど?どこに入るのかしら?』
「バッ、ちっげーよ!それお前の幻聴だろ!なにマダオの声とか幻聴で聞いちゃってんの!?浮気か!」
『マダオはお前だ!仕事なくてパチンコするくらいならアイス買ってきて!今すぐに!』
「パシリか俺は!」
『やったね銀ちゃん!マダオからパシリにレベルアップ!』
「レベルアップじゃねーよ!つうかパシリ!?彼氏じゃないの俺!?」
『彼氏にレベルアップしたいならアイス代は銀ちゃん持ちでね。パシリの場合は私が持つけど』
「パシリにレベルアップだ〜!わ〜い!」
『パシリでいいのかよ!ああもう、こんな喋ってる時間勿体ないから早く買って来てよ〜』
「あーもう一時間くらい待ってろ、アイス持ってってやるから」
『どうせ当たんないんだから普通に買ってきて』
「今日は当たる気配がすんだよ!お前と話してる間にも運気が流れてくからもう切るぞ」
『もうとっくに運気流れたから、はやく買ってきて!』
「流れてねーよ!まだ残ってる!じゃあな、大量のアイスを待ってろ!」
『あっ、ちょっと待って!』
「あーもう、なんだよ、マジで一時間後には買ってってやるから、大人しく待ってろ」
『ダメなの待てないの今すぐじゃないと嫌!』
「そういうセリフは夜に言ってくれると銀さん激しく燃えるんだけどなァ」
『黙れマダオ。ねえ銀ちゃん、今すぐじゃないと私死んじゃう』
「おい最初のセリフと後のセリフの声のトーンどうにかしろ、どんだけ低い声でちゃうわけ?」
『早く〜死んじゃう!』
「俺の方が今パチンコしないと死んじゃう」
『銀ちゃんが来てくれないと死んじゃうって可愛い彼女が言ってんのに、それほっぽいてパチンコしないと死んじゃうわけ!?』
「お前が来て欲しーのはアイスだろーがァァァァァアアア!!新八にでも頼めよ!」
『駄目だよ銀ちゃんじゃないと!』
「なんでだよ、俺が納得する理由を言ってみろよ?ア?」
『銀ちゃんのことアイ(愛)スてるから…なんちゃってー!』

 親父ギャグかよふざけんなァァァァァァァアアアア!!
 なんて叫びつつ俺は原付にまたがってアイスを買いにコンビニに向かった。親父ギャグでも「アイ(愛)スてる」だなんて嬉しかったわけじゃねーからなァァァァアア!運気が流れてったからパチンコやめただけだから!そしてパチンコしなかったからアイス奢ってやるだけだからな!別に彼氏にレベルアップしたいワケじゃねーよ!!だって俺彼氏だもん!俺彼氏だからね!?







土方十四郎の場合

「え…そんなこと言えないよ、“もし”どころか本気で殺される」
「血相変えて駆けつけてくれまさァ」
「いや無理だって…ちょっ、勝手に!」

『もしもし』
「……」
『オイ?もしもし』
「──────っ、もしもし!」
『なんだ、どうした』
「あ、あの、ええと──────はやくしてくだせェよ」
『ア?総悟といんのか?』
「え!?いやいやいや!違いますよ!」
『後ろから声が聞こえてんだよ』
「ほんと違います!」
『お前も一緒になってサボってんじゃねぇ』
「ち、違います、ほんと」
『チッ。まァいい、用件はなんだ』
「う…その、ですね」
『もごもごしてんじゃねぇ、ハッキリしろ』
「あの…今すぐアイス買ってきてくれなきゃ、死んじゃう」
『ハア?』
「い、今すぐアイスを買ってきてくれないと私死んじゃいます!」
『そうか…お前は俺を置いて死ぬんだな?』
「えっ…え?」
『俺が歌舞伎町の女共からちやほやされるのを、お前は天で指くわえて見てるんだな?』
「ちやほや!?え、待って、や」
『安心しろ、なんとか指だけじゃなくてアイスもくわえられるように神様に頼んでやる』
「待って!土方さん!ち、ちが──────歌舞伎町の女共からちやほやって、どんだけ自意識過剰なんですかねィ」
『なんつった総悟ォォォオオオオオオ!テメ、首洗って待ってろ!!』
「帰ってくるならアイス忘れないでくだせーよ──────あ、私バーゲンダッシュが食べたいです」
『お前もちゃっかり注文してんじゃねェェェェェエエエエエ!』

 そのあと早々に怒鳴り込んできた土方さんは「アイスなんて買うか!副長をパシってんじゃねぇ!」と俺達に一発ずつゲンコツを落としたのだけれど、後からひょっこり顔を出した山崎にバーゲンダッシュを買わせているのだから彼女にだけは甘いったらありゃしねェ。俺の分を抜かして一個しか買って来させてなかったけど、仲良く半分こしてくれやしたぜ。ざまーみろ。






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