真夜中のラブコール・おまけ





「痛てて…良い蹴り持ってるね」
「そんなの褒められても全然嬉しくないし!」
「夜中なのに元気だなァ」
「元気じゃないよ!私寝てたんだから!」
「それはその寝癖見てれば分かっ」
「今なんか言った?」
「言ってません!」
「………土方さんのばか」

 ボソリとまた彼女はそう呟いた。副長にそんなに寝癖をバカにされたんだろうか。なんだか他の理由もありそうだけど…。

「寝癖なんかより、寝相の方を気をつけなね」

 そう言って俺は内側に折れ込んだ彼女の浴衣の襟元に手を伸ばした。女の子なんだから、寝癖なんかよりこっちを気にしてほしいものだ。襟元を直す俺を彼女は寂しそうな目で見つめていた。

「ありがと…」
「どういたしまして」
「………」

 あれ、大人しくなっちゃった。副長に寝癖のことをバカにされたのがそんなにショックだったのかな。

「そんなに気にせんでも、かわいい寝癖だよ」
「…退くんに言われても嬉しくないし!」
「なっ、ライオンヘアー褒めてやったのに!」
「ライオン!?どこが!?」
「この髪が!」

 人が慰めれば可愛いくないことばかり言って…まあそこが彼女の可愛いところか。そうやって元気な方が似合ってるんだから、大人しくなんかなんないで頑張りなよ。そんな気持ちを込めて彼女の髪を更にぐしゃぐしゃと掻き乱した。

「きゃー地味菌がうつるー!」
「菌!?菌ってなんだよ!?」
「お前ら何時だと思ってやがる!」

 すると突然飛んだ土方さんの怒声に俺と彼女は驚いて肩を揺らした。

「ふ、副長」
「廊下で騒いでんじゃねぇ!」
「…土方さんが一番うるさいですけどね」
「ア?寝ぼけてねーで部屋戻れって言っただろ」
「寝ぼけてないってさっき私言いましたよね?起こされたって言いましたよね?」
「それは…悪かったな」
「別にいいですけどっ。じゃあ私寝ますんで、行こ退くん」
「え?俺?」
「待て、山崎は残れ」
「え?はい」
「ちょっ、先に退くん呼んだの私ですけど!」
「こっちは仕事だ!」
「土方さんが呼んでたのは総悟くんでしょ!」
「あいつがいねぇから山崎にやらせんだよ!」
「退くん関係ないじゃないですか!」
「お前にもな!」
「なっ…!」
「副長それは」
「お仕事の邪魔してどーもすみませんでした!先に休ませて頂きますけどお仕事頑張ってくださいね!」
「フン、さっさと寝ろ!寝坊すんじゃねぇぞ」
「しません!」

 俺を置いてけぼりの状態で二人は言い合い、彼女は部屋に戻ってしまった。口を挟むことも出来ず、ちらりと副長の様子を伺えば鬼のような形相で俺のことを睨んでいた。

「テメェこんな時間に何してた」
「あ、あの、夜食でも食おうかと思って」
「仕事がねぇならサッサと寝ろ」
「え?でもさっき沖田隊長の仕事を俺にって」
「同じことを何度も言わせるんじゃねェ」
「寝ます!」

 ギロリと睨まれて、俺はすかさず回れ右をして部屋へと急いだ。背後で副長の舌打ちが聞こえて、こっそりと振り返る。そこには苦そうな表情をして煙草を咥える副長の姿があった。まったく、二人とも素直じゃないんだから、とくに副長。しかし腹が減った。俺、夜食食いに来ただけなんだけどなァ…






20090529
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