寒い朝のとくべつ





 朝、目が覚めると空気がひんやりとしていて、布団から出ている顔が冷えていた。ここのところ冷えていたけれど、今朝はとくに寒い。寝ぼけた頭でそう考えながら私は布団の中に顔ごと潜った。潜る前にチラリと目にした時計は私が起きる時間を指していた。今日は朝ご飯の当番じゃないからもう少し寝坊しても良いよね、なんて思いながらもう一眠りしようと体を布団にあずけたのだけれど、どうにも眠ることが出来なかった。習慣、というものなのか私の体はどうやらこの時間に目覚めるようになってしまったらしい。起きようかともう一度布団から顔を出してみたのだけれど、やはり顔を冷やす寒さに私は再び布団の中へと潜ってしまった。

「寒いから布団から出たくない…」

 そう一人呟いて、私は眠れもしないのに目を閉じた。こんな時期から布団から出られないなんて言っていたら、冬本番になったときにどうするのか。そう思いながらも布団から出る気にはなれなかった。…早く暖房つけてくれないかなァ。





 眠れない、なんて思いつつも布団の中で目を閉じているうちに私はどうやら眠ってしまったらしい。おでこに人のぬくもりを感じて私は目が覚めた。目を開けるとそこには土方さんがいて、私のおでこにある手は土方さんのものだった。寝ぼけている私の頭は、土方さんがここにいることよりも潜って寝ていたはずなのにいつの間に私は布団から顔を出したのかということを考えていた。

「お前…頭まで布団かぶってて息苦しくねェのか」
「…寒かったんです」

 土方さんが布団をずらしたのか、と一人納得しながら目を閉じた。あれ、そういえばどうしてここに土方さんがいるんだろう…?新たな疑問が浮かび目を開けると、土方さんは私のおでこから手を離した。

「熱はねェみてーだけど、具合悪ィのか」
「………ねつ?」

 熱?具合?一体何のことだろうか。

「あっ……!い、今何時ですか」

 私は二度寝していたことにようやく気が付いた。焦りながら時間を聞くともう十時。私は眠れないなんて言いながら、あれから四時間も寝ていたらしい。いくら朝ご飯当番じゃないとはいえ、いつまでも仕事をしている姿を見なければ不思議に思うに違いない。それで土方さんは私の部屋まで様子を見に来たのか。

「具合悪ィなら薬持ってくるが…腹でも痛ェのか」
「あ、いえ…あの」

 まさか寒くて布団に潜っていたら今まで二度寝してましたなんて言えやしない。ましてや土方さんは私が具合悪いって思い込んでる。どうしよう…と、それよりも眠気も覚めて覚醒した私の頭は先ほどのことを思い出して熱くなっていた。

 土方さんが私のおでこに手を乗せてた…!

 思わず思い出してしまい、頭だけでなく顔まで熱くなるのを感じた。私は誤魔化すように焦って口を開いた。

「も、もう大丈夫なんで、少し寝たら良くなったので今から仕事します!」
「…なんか顔赤くねェか?」
「気のせい、気のせいです!ご迷惑かけてすみません、今からちゃんと仕事し、っっっ!」
「熱出てきたんじゃねーか」

 大丈夫だから、と慌てて起き上がろうとした私のおでこに再び土方さんの手が触れた。起き上がろうとしていた体はあっけなく布団へと戻ってしまって、私の顔は更に熱を帯びることとなった。

「薬と飯持ってきてやるから寝てろ」
「だ、だ大丈夫ですほんと」
「んな赤ェ顔して何言ってやがる。いいから寝てろ」

 私を布団に押し付けるように、軽く手のひらでおでこを押して土方さんは部屋を出て行ってしまった。ど、どうしよう具合悪くなんてないし、熱なんかないのに…!土方さんに対する罪悪感を感じながらも、私はドキドキを抑えることが出来なかった。明日、今日の分も倍働けば、今日はこうやってズル休みしてても良いかな…。熱いおでこに手をのて土方さんの手のぬくもりを思い出しながら、一人じゃ食べられないと言えば土方さんは食べさせてくれるだろうかと考えて頬がゆるんだ。まさかそんなわけがないとは思いながらも、少しでも私を気にかけて様子を見に来てくれたことが嬉しくて私は頬がゆるむのを抑えることが出来なかった。

 こうやって様子を見に来てくれるの、私だけ特別だったらいいのに。






20081109
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