私とパペコちゅーちゅーしませんか





 ない。昼の見廻りを終えて、私がおやつに食べようと買って来ておいたパペコが冷凍庫に入っていない。片方を誰かが食べちゃったとかならまだ許してあげたものの、私のパペコは袋ごとなくなっていた。…私のパペコ食べた二人組み出て来い!暑さにやられ、あの甘さと冷たさで体力を回復しようとしていた私がどれだけパペコを食べるのを楽しみにしていたことか!パペコ食べた奴絶対に許すまじ…!そんな鬼の形相で犯人を捜していたら、なんとも犯人はあっさりと見つかった。しかも二人組みだと思っていた犯人はたった一人で、縁側で悠々とくつろいでいる。

「…隊長、何食ってんですか」
「見てわかんねーのかィ」
「分かりますよ。パペコ!」
「そのとーり」
「私のパペコ!!」
「そのとーり」
「そのとーりじゃねェェェェエ!それ私のパペコですよ!!」
「だから、そのとーりだっつってんだろィ」
「なんで勝手に食べてんですか!?なんでしかも二個食いなんですか!?」

 私の見つけた犯人は沖田隊長で、私の見つけた犯人はたった一人で二つ入りのパペコを一人で食べていた。そう、パペコを二つとも口に含んで!

「なんでそんな食べ方してるんですか!?」
「一気食いしてみたかったんでィ」
「それなら自分で買ってやってくださいよ!それは私のパペコです!」
「暑ィのにうるせーなァ」
「その暑い中見廻り終えて…パペコ食べるの楽しみにしてたのに…」
「……ホレ」
「?」

 ちゅーちゅー、というよりはもぎゅもぎゅと二つのパペコを口に頬張り、手で押し出しながら食べる沖田隊長を見ていると怒りもだんだんと悲しみに変わり、頭をうなだれた私に沖田隊長が声をかけた。何かと思い顔をあげると一つのパペコは口に含んだまま、もう一つの食べかけのパペコを私に差し出していた。

「しょーがねーから半分やりまさァ」
「…元は私のです」
「いらねーならやらねぇけど」
「いっ、いります!」

 元は私のパペコ。沖田隊長の態度と言い分がおかしいと思いながらも、私はそれよりも差し出されたパペコが沖田隊長の食べかけだということが気になってしかたなかった。これって、間接ちゅう…!どうしよう、なんて思う間も顔を赤らめる間もなく手を引っ込めかけた沖田隊長に私は急いで返事をし、手からパペコを奪った。その勢いでパペコを口に含み押し出すと、口の中いっぱいにパペコの甘さと冷たさが一気に広がった。生き返る…。パペコに癒されホワン、としていた私とは違い、沖田隊長はニヤリとした笑みを浮かべていた。

「うめぇですかィ?」
「ハイ!美味しいです」
「そりゃあ良かった」

 そう言って最後の一口を口に含み、沖田隊長は空になったパペコを私に投げてよこした。私は片手でパペコを食べながら空いている方の手でそれを受け取った。沖田隊長はニヤリとした笑みを浮かべたまま立ち上がって私を見下ろした。

「この間の言葉、ありゃ本当ですかィ?」
「この間の言葉…?」
「“私、好きな人としかパペコはちゅーちゅーしないんです!”」
「…っ!!」
「光栄でさァ」

 ニヤリ、と浮かべていた笑みを一瞬柔らかく緩めて沖田隊長は一言残してその場を後にした。

 私が気付いた頃には手の中にあったパペコはどろどろに溶けていた。この暑さのせいなのか、私の体温が急上昇したせいなのか…きっと沖田隊長のせいだけれど。


(おまけ)
「あ、沖田隊長!パペコ買ってきたんですけど半分どうです?」
「いらねぇ。俺ァ好きな人としかパペコはちゅーちゅーしない主義なんでさァ」
「…へ?」
「山崎となんか死んでもしたくないねィ」
「それって俺のこと死ぬほど嫌いってことォォォオ!?」






20080819
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