愛はとても痛いもの





「うわあ!どうしたんですかそれ…聞くまでもないけど」
「そんな冷たいこと言わないでよォ!」
「だから聞いてあげたじゃないですか」
「うう…お妙さんから愛の鉄拳を」
「愛の、じゃなくてただの鉄拳ですよ」
「お妙さんはシャイなんです!」
「あーはいはい、そうですか」
「………」
「…なんですか」
「手当てして?」
「……ハァ」

 溜息をひとつついて、「待っていてください」と言って彼女は救急箱を取りに行った。お妙さんに愛の鉄拳やら蹴りやらを受けて傷ついたまま帰ってくる俺を手当てしてくれるのは、いつも彼女。自分でだって出来るのに、彼女が手当てしてくれるまでは傷をほっておいてしまうのは一体何故だろう。

「痛、いてててて!」
「男なんだからこれくらい我慢してください」
「もッ、もっと優しくゥ!」
「お妙さんの愛の鉄拳が痛いように、私の手当ても痛いんです」
「え…」
「なんですか」
「愛の…鉄拳?」
「何頬染めてんですか気持ち悪い、自分で愛の鉄拳って言ったんでしょ」

 “お妙さんの愛の鉄拳が痛いように、私の手当ても痛いんです”ってことは…

「あ、あい、愛っ、ああああい!?」
「な、唾とばさないで下さいよー!自分で言ったのになんでそんなに興奮して」
「愛の手当てなのか!?」
「は?だから愛の手当てだって…あ、いや、違!」
「おおおお、俺に、愛の手当てを…!」
「違、違いますってばァ!」
「あ、待っ、…ギィャャアアアア!!!」

 立ち上がり部屋を出て行ってしまう彼女を呼び止めようとしたのだが、立ち上がった瞬間、傷に消毒液をブッかけられた俺はその場にうずくまるしかなかった。痛いィィィイイイイ!

「なにやってんだ近藤さん」
「あ、愛の手当ては痛いんだよトシ…」
「はぁ?」

 今まで俺は愛の手当てを受けていたのだと思うとドキドキして仕方がなかった。愛の手当て…だからこそ俺はいつも彼女の手当てを待っていたのかなァ。愛の手当ては…ものすっごく、痛い。






20081024
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