雑誌の恋愛特集はついつい読んじゃう





「なに読んでんでィ?」
「今月号の雑誌。お洗濯が早めに終わったからちょっと暇潰しに、ね」
「フーン」
「あ、お茶でもいれる?」
「これでいい」

 そう言って総悟は私の飲みかけの麦茶を一気に飲み干した。パラリと雑誌をめくると「気になる彼の気持ちを確かめる方法」なんていう恋愛特集ページが目に入った。特に気に止めず、またパラリとめくろうとするとその手を総悟の手が止めた。

「ん?総悟こういうの興味あるの?」
「面白れーこと書いてあるじゃねーですかィ」
「えー?こういうのってあんましアテにならないの多いんだけど」
「これは当たるからやってみなせェ」
「“気になる彼をいきなり呼び捨てしてみよう!その反応であなたへの気持ちがわかる!”ってやつ?」
「おう」
「こんなんいきなり呼び捨てされたら誰でも驚くんじゃないの?」
「いーからいーから、ほら山崎が来た。」
「え、ザキにやるの?」

 私の質問にニヤリと笑って返事をする総悟に、私はやるしかないのかと雑誌を閉じて息を吸った。少し離れたザキにちゃんと聞こえるように。別に、私の気になる人じゃないんだけど。

「…退ー!!…なんか固まっちゃったけど、どういう気持ちなわけ?」

 その場から動かなくなってしまったザキを見て疑問を総悟に問うと、総悟はどこからかバズーカを持ち出してザキに向けて「3秒以内に来ねーと殺す」と言い放った。少し離れた位置にいるザキには聞こえないのではないかと思うほどの声の大きさだったけれど、ばっちり聞こえたのかザキは走って私達の目の前まで来た。

「ザキ顔真っ赤だよ!どうしたの?」
「は、走ったから」
「違いやすぜ、もう一度言ってやりなせぇ」
「え?これ?」

 私が閉じた雑誌を指差すと総悟は面白そうに笑ってうなずいた。このやりとりがよく分からないのかザキは戸惑っていたけれど、私は総悟の言う通りにもう一度言ってみた。

「さがる」
「ッ…!」
「ほーら、原因はこれでさァ」

 私がさがる、と一言名前を呼べば赤かったザキの顔が更に赤くなった。原因はこれ、って。私が名前を呼んだから顔を赤くしたの?“気になる彼をいきなり呼び捨てしてみよう!その反応であなたへの気持ちがわかる!”ってことは…つまり。

「な、なに?さっきから…」
「“気になる彼をいきなり呼び捨てしてみよう!その反応であなたへの気持ちがわかる!”って雑誌に書いてあったんでさァ」
「え!?な、なんですかそれ」

 私がザキの名前を呼び捨てして、ザキが顔を赤くするってことは…つまり。そういうことなんだろうけど、私はちゃんと確認したくて急いで雑誌のページをめくった。さっきのページはどこだっただろう。うまく見つけられなくてパラパラとめくっていると、なにやら視界の隅で総悟とザキがこしょこしょ話をしている。と思ったら、ザキが私から雑誌を取り上げた。何かと思ってザキの顔を見ると、ザキは顔を赤くしたまま私の名前を呼んだ。いつものように「ちゃん」をつけて呼ぶのではなくて、呼び捨てで。

「えっ!」
「…マジですかィ」

 私の顔を見てザキは驚き、総悟は嫌そうな顔をした。え、なに、なんなの。驚いたザキの手から落ちた雑誌はちょうど私が探していたページを開いて地面に落下した。なんだか顔が熱い、なんて感じながら雑誌を拾い上げる私の横で総悟は立ち上がって溜息をついた。

「あーあーつまんねぇ。山崎に恥かかせよーと思ったのに、なんで顔赤くしてんでさァ」
「え?…だれが?」

 そう問う私を指さして、総悟はどこかへ行ってしまった。



「もう一度、名前呼んでほしいな」
「ザキが呼んでくれたら…いいけど」

 雑誌を顔に押し当てて、赤い顔を隠しながら私は呟いた。まさかザキに名前を呼ばれてこんな気持ちになるなんて。心地よく響くザキの声が私の名を呼んだ。更に赤くなる顔を隠したかったけれど、ザキの反応がどうしても見たくて、私は雑誌から顔を出してザキの顔を見た。真っ赤な顔。

「さがる」

“気になる彼をいきなり呼び捨てしてみよう!その反応であなたへの気持ちがわかる!”
“彼が顔を赤くしたらあなたのことが好きなしるし!”






20081024
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