それが答えだ。





「え、なに、ゲームは?」
「うん、後でしよ」
「えっ、待って、何するの」
「何って…おれに言わせたいの」
「そ、そうじゃ」

 なくて、という言葉は祐希の唇に吸い込まれていった。ゲームをしよう、と言われて部屋に来て、ソフトを選んで準備していたのに、いきなりコントローラーを奪われたと思えばずいずいと顔を寄せられて「後で」と口を塞がれるだなんて戸惑うに決まってるでしょう。
 唇が離れた隙に肩を押してみても、祐希はびくともしない。

「祐希、ゲームは?」
「後でも出来るでしょう、そんなの」
「でも祐希がしたいって言ったんだよ」
「うん、でも今はがしたくなった」
「わ、私がしたいってなにそれ意味分か」

 んない、という言葉は再び祐希の唇に吸い込まれていく。祐希が言いたいことも、祐希がしたいことも、そんなの言葉にされなくたって分かる。この唇と私の身体を撫でる手がその証拠だ。分かる、けど、だけど。

「ゆ、祐希」
「今度はなに」
「なに、じゃなくて、なんていうか…」
「なんていうか?」
「ムードもなにもない…」
「……ムード」

 そう、ムード。今までだって祐希がムードというムードを作ってくれたことはないし、そんなもの作って欲しいとも思わないけど。だけどこれはあんまりじゃないですか。ゲームしよう、と声を弾ませながら帰宅したはずなのに、たった数秒前までゲームする気まんまんでコントローラーを握っていたのに、どうしてこんないきなり、こんな展開になるの?いくらなんでもゲームの騒がしいBGMを聞きながら、だなんて私が待ったをかけたって仕方がない話だと思う。
 祐希は私の言葉を反芻して、少し黙った。けれど再び私の唇に自分の唇を押しつけた。

「そんなもの必要なの」
「だって数秒前までゲームする気まんまんだったよね?ゲームする雰囲気しかなかったよね?」
「俺がに触れたいと思ったから、するの。俺がに触れたいと思うことにムードも雰囲気も必要ない」

 こてん、と倒されて天井と祐希が見える。

「俺が触れたい時に触れるのじゃだめ?」
「だ、だめじゃないけど」
「本当はいつも触れたいんだよ、でも我慢してるんだから褒めてよ」
「え…」
「ね、はやく褒めて」

 そう言われても、どう褒めていいのか分からない。ただ、胸の奥がきゅうっと熱くなるのが苦しくて、祐希のせいだよと伝えたくて、私は柔らかな亜麻色を引き寄せて抱きしめた。胸元で聞こえた小さな二文字の言葉に、私の胸はまた苦しくなった。

 もう祐希の声と自分の心臓の音しか聞こえないよ。






20120111
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