てのひら おまけ







 気持ちを切り替えるようにコンビニで飲み物だけを買って飲みながら赤司っちの家に着くと、門の所に盛り塩が置いてあった。
 どうやらこれを撒いてから入れということらしい。
 オレたちは顔を見合わせた後、一斉に青峰っちに向かって塩を撒いた。

「バッ……なんで俺だけだよ!林に入ったのはお前らもだろ!」
「紫原っちが青峰っちだけキモいって言ってたっス」
「でも僕たちも撒いときましょう。青峰くんの変なのがうつってたら嫌です」
「変なのってなんだよ!」

 一通り身を清めた後、玄関のドアを開けると帰って来るのが分かっていたかのように赤司っちが現れた。

「お前たち、まずは風呂に入っておいで」

 先に帰った紫原っちから話は聞いているのだろう。赤司っちはオレたちには1階にある浴室を、そしてには桃っちが準備しているからと2階の浴室を案内した。
 普段は住んでいない家だというのに、まるで旅館のようにいくつも大きな風呂があるというのだから赤司家は計り知れない。
 青峰っちはさっさと風呂場へと向かい、黒子っちもそれについて行った。

、桃っちが一緒なら怖くない?2階まで送ろうか」
「も〜、家の中なら大丈夫だってば」

 そうは言っても、この家は広い。今日きたばかりで慣れない家の中では怖いのではないか、と思っていると2階から桃っちが顔をだした。

ちゃん、おかえり〜!赤司くんの用意してくれた入浴剤すっごいの!どれにしようか迷っちゃう!」

 早く来て一緒に選ぼう、と手招きをする桃っちには笑い、あとでねと言って階段を駆け上がって行った。
 どうやら林の中でのこともあまり気にせず、大丈夫そうだった。
 特に変なことも起きず、変なものを見ることもなく、こうして帰ってくることが出来て良かった。
 桃っちに向けたの笑顔を見て、そう思った。

「じゃあオレもお風呂いただくっス」
「あぁ。黄瀬、ありがとう」
「え?なにがっスか?」
「“からから様”を戻してくれただろう」

 赤司っちのその言葉に、オレは目を丸めた。
 紫原っちには、林に入った話しかしていないはずだった。と話している時に3人で騒がしく話していたけれど、その時にもからから様を戻した話をしている様子はなかった。

「え……なんで知ってるんスか?」
「元に戻ったのが分かるからだよ」
「えぇっ、赤司っちも霊感あるんスか?」
「さあ、どうだろうね。そういう風に考えたことはないけど」
「いや、そういうのは霊感あるって世間一般では言うんスよ」
「そうか」

 気に留めないように笑う赤司っちに、だからか───────と思った。
 赤司っちは最初から、からから様のことも、あの辺りの気配についても分かっていたのだ。それでオレがなんとなく“感じられる”ことを知っていて、気をつけるように言ったんだ。

「もともとあれは明日、明るいうちにお前たちに元に戻してもらおうと思ってたんだ」
「それなら先に言ってよ!青峰っちがズカズカ林ん中入って行っちゃって大変だったんスよ」
「黄瀬がいるから大丈夫だと思って。現に大丈夫だっただろう?」
「そうっスけど……」
「桃井のことは、本人は気づいていないけれど寄せやすいから引き止めたんだ。は見えないタイプだろう?」
「でも……からから様、いたっスよ。には言ってないっスけど」

 オレはがいないのを一応確認した後、林の中でのことを赤司っちに説明した。
 赤司っちは話の内容を特に驚いた様子もなく聞いていた。本当に、赤司っちにとっては全て想定の範囲内だったというわけだ。

「からから様は守り神だからね。“見える”ようにしたんだろう」
「青峰っちはなんか他の変なモンが見えてたみたいっスけど」
「はは、野生の勘というやつかな。青峰には驚かされるね」
「も〜、オレ結構ひやひやしたんスよ」
「良い思い出になっただろう?夏と言えば肝試しだ」

 そう言って、赤司っちは悪戯っぽく笑い、オレにも風呂に入るように促した。
 まさかこれが、赤司っちが用意してくれた合宿のレクレーションだとでも言うのだろうか。だとしたら、あまりにも本格的するぎる。
 けれど青峰っちにとっては、大いに退屈しのぎになっただろう。

「ほどほどにしてよ……」
「お前たちを危険に晒すようなことはしないよ」

 自信たっぷりにそう言う赤司っちに、敵わないなと思った。
 確かに、危険はなく、安全に、その上で本物の肝試しを体験してきたのだ。

 まぁ、が今晩怖い夢を見ないのなら、それで良しとするっス。







20210618 黄瀬くんお誕生日おめでとう企画短編
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