お嬢さん、夜道は背後に気をつけて





 部活後の自主練を終えて時計を見れば、21時を過ぎていた。少し遅くなったな、と思いながら暗い帰り道を歩いていれば、コンビニから見慣れた顔が出てきた。
 こんな時間にひとりで、しかも露出の多い格好をしやがって、とオレは目を細めた。いくら近所だろうと、いくら暑かろうと、こんな時間に女がひとりで歩くのにしてていい格好じゃない。
 もっとしまえ、足を!腕を!
 オレは歩く速度を速めてアイツの背後に近寄った。そして真後ろに来た所で膝で背中を軽く蹴る。物凄い勢いで振り返る姿を見て、こんなに早く動けたのかと逆にオレが驚いてしまった。

「バーカ」
「ひゅ、日向!びっくりさせないでよ!」
「お前、んな隙だらけじゃ刺されんぞ」
「怖いこと言わないでよ、刺されないから!」
「いや余裕でさせるだろ。オレが背後に立っても気付いてねぇんだから」
「さ、刺されないってば」

 図星な上に想像して怖くなったのか、コイツはきょろきょろとあたりを見ながら歩き出した。
 ったく、そういうことじゃねぇよ。

「こんな時間に歩くなっつの」

 そんな格好で、という言葉は飲み込んだ。流石に、これは変態だなんだと言われかねない。

「だってアイス食べたかったんだもん」
「刺されてまでか」
「だから、刺されないってば!」

 ガサガサとコンビニの袋を揺らしながら背中をさするのを見て、オレは息を吐いた。
 まぁ確かに、まだ22時前だと言ってしまえばそれまでだ。深夜2時なわけでもない、出歩くなと言うのは無理があるし、そんな考えは過保護すぎるとも思う。

「送ってく」
「え、いいよ。逆方向だし、部活帰りでお腹空いてるでしょ」
「刺されたら困んだろーが」
「刺されないってば。なんでそんなに脅すのよ」
「脅してんじゃねぇよ。お前だって一応女なんだから、もう少し危機感持てって言ってんの」
「はいはい、一応オンナ、ね」
「お前が男の黒子より飯を食おうとも、あの火神を泣かそうと悪ガキみてーに2号抱いて追いかけまわそうとも、小金井と廊下に立たされていようとも、世間様から見りゃ女だからな」
「黒子くんが小食すぎるだけだし、いつも小馬鹿にしてくる火神に仕返ししてるだけだし、コガちゃんのは……コガちゃんにそそのかされただけだし!」
「オレは廊下に立たされてる女をお前意外見たことねーよ」
「う……」
「だからまぁ、本性知ってりゃ女か疑いたくもなるが、それを知らない奴から見れば女に見えるだろうから送ってってやるって言ってんだよ」
「どっからどう見ても女だから!でも別に私なんかを刺したがる変態なんていないだろうし、ひとりで帰ります!」

 ふくれっつらでオレを睨み、早足で追いぬかして行く背中を再び膝でこずいた。

「痛っ」
「ほら刺された」
「今のは日向が後ろにいるの知ってたからだし!」

 バーカ、俺こそお前を狙ってるオオカミだっつうの。






20120730
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