go punching!





「え、青峰っちまだ来てないんスか?」

 赤司っちが委員会で遅れるから、それまで各自アップしつつ好きなことをしていていい、という緑間っちの報告を受けて「青峰っちと1on1が出来る!」と飛び上がったものの、肝心の青峰っちの姿がない。いつも真っ先に着替えている青峰っちのロッカーの中は丸められた雑誌やタオルが散乱しているだけで、制服も学生鞄もなかった。いつもなら掃除当番だろうと適当に切り上げてくるクセに、今日に限って何やってんだよ!

 青峰っちと同じクラスの奴に声をかければまだ教室にいたと言われ、オレは体育館を飛び出して走った。





「青峰ーっち!」
「あ?なんだよ」

 教室の扉を開ければ、もう掃除も終わり騒がしい生徒の姿はなかった。
 そこにいたのは青峰っちだけ。しかも授業中でもないというのに、机に向かって何やらノートに書き込んでいるという信じられない光景!

「何やってんスか、早く体育館来てよ!」
「オレだってさっさと行きてぇっつの」
「じゃあ早く!赤司っちが今日来るの遅れるから、それまで好きなことしてて良いって!だから1on1しよ!」
「分かったようっせぇな、コレ終わんねぇから話かけんな」
「えー?もう、何やってんスか」

 早く、と急かしてみても焦ることもなく、青峰っちの手は一定のリズムでシャーペンを動かしていた。大好きなバスケを後回しにしてまで、何をやってるっていうんだ。こんなことをしている間にも委員会が終了する時間は一刻一刻と近付いているっていうのに。
 口を尖らせながら近付けば、机の上には青峰っちが書きこんでいるノートの他に、綺麗な女の子の字で綴られたノートがあった。

っちのノート?写してんの?」
「これ出さねーと補習なんだよ」
「またっスかぁ?写して出したんじゃ意味ねーじゃん」
「いんだよ」
「ほんと、っちって優しいっスねえ」
「優しかねぇよ、ノートの代わりにアイス買わせる気だからな」
「そんくらいしてもバチ当たんねーと思うスわ」

 青峰っちのカノジョのっち。バスケしてる青峰っちはマジでカッケーと思うけど、普段の青峰っちは少々手に負えないと思う。まぁそんなとこも、結局はバスケと同じだけど。そんな青峰っちと長年幼馴染をしている桃っちもすげーけど、でもそれは幼馴染としてであって、恋人として付き合うとなると話は別だ。こんな青峰っちと対等に肩を並べられることも、惹きつけられることも、オレは単純にすげーと思うんスよ。
 オレはまだバスケで青峰っちに勝てたことねーけど、っちはきっと違う何かで青峰っちに勝ったことがあるんだろーなと思うと尊敬すると共に、なんだかちょっとクヤシイ。

「ねー青峰っち」
「あ?」
っちのドコが好きっスか」
「はぁ?なんだよ急に、話しかけんなって言ってんだろ」
「写してるだけなんだから答えられるっしょ。ねーどこどこ?」

 アコガレである青峰っちが惹かれたっち。可愛い女の子だとは思うけど、青峰っちはっちのどこに惹かれたのかオレは気になっていた。
 今がチャンスだ、とオレは青峰っちの前の席に座って口角を上げた。

 ギラギラとした青峰っちの瞳に、っちは一体どんな光を射したのか。

「うるせぇなぁ、お前」
「いーじゃん、教えてよ」

 煩わしそうな顔をしつつ手を止めたということは、答えてくれるということだ。今ならいつも花を背負ってるオレの背景に、ワクワクと言う文字が躍っている自信がある。
 ホラホラ青峰っち、どこどこ?

「あー……どこだろな、あいつおっぱい小っちゃいしな」
「あ、あおみねっち……」

 オレが動揺したのは青峰っちの発言にじゃない。青峰っちが下品なことを言うのはいつものことだ。オレが動揺したのは耳に入った言葉にではなく、視界に入った姿。
 青峰っちの後ろの扉からこっちを睨んでいる、っちにだった。

「さつきまでいかなくてもよ」
「ちょ、青峰っち!」

 何を思い出してくれているのか、目を瞑り眉間に若干の皺を寄せながら話す青峰っちは、背後に迫って来ているっちを教えるためにオレが焦って声をかけ肩を叩こうとも、お構いなしだ。
 ちょっと、女の子にこんなこと聞かせちゃダメだって!

「せめてもうちょいデ、ッ!?」

 あーあ。もう知らないっス。
 最後まで言い切る前にっちの拳が青峰っちの後頭部に落ちて、ようやく青峰っちは目を開けた。
 にしても、この人マジでこんなことしか頭にないワケじゃないっスよね?まぁ、だとしたらっちと付き合わない────って、やべ。これじゃオレも青峰っちと変わんねーじゃん。うそうそ、っちマジ魅力的!これから成長の余地アリ!
 って、これフォローになってる?

「っ痛ェな!!なんだよ!げ、

 マジな話、青峰っちのことを平気で殴る所も、こんな風に凄んでくる青峰っちに怯まない所も、っちの魅力だと思う。凄んでくる青峰っちは男でもビビる奴が大半だというのに、っちときたらそれはもう勇ましく青峰っちを睨み下ろしている。度胸があると言ってしまえばそれまでだけど、小さな胸に似合わず大きな心を持ってるからこそ、見かけだけの青峰っちにビビらず付き合ってられるんだと思うんスよ。
 って、あーあ。また小さな胸、とか青峰っちにつられちゃった。オレは断じてそんな風に思ったことないからねっち!

「ちっちゃくてすみませんね。大輝も────」

 と言いかけてっちの手がオレに伸びた。え、まさかオレの心の中読まれちゃってた?オレも殴られちゃう?なんて一瞬怯んだものの、拳が飛んでくることはなく、っちの手はオレのTシャツの胸元を掴んだ。
 何をされるのかと思えば、そのままTシャツを引っ張られっちの顔が勢い良く近付いた。そのままぶつかるように唇が合わせられ、瞬きをひとつした時にはもう離れていた。


 え、え?

 オ レ 今 、 キ ス さ れ た ?

 え?

 ぇぇぇぇぇええええぇぇぇえぇぇぇぇぇええぇぇえええええ!?


「黄瀬くんくらいキラキラして王子様みたいだったら良かったのに!」

 そう言い捨てて教室を出て行くっちにオレも青峰っちも唖然としていて、しばらくはっちが走り去る足音しか聞こえてこなかった。
 え、なに、なんで!?
 なんでオレ今キスされたの!?青峰っちに対する仕返し!?桃っちの名前だしたから!?



 奪われたクチビルを手で押さえてドキドキしていれば、我に返った青峰っちがオレを殴り、っちを追って教室を出て行った。

「ちょ、モデルの顔!てーかオレ被害者ぁ────!」

 だーっ、もう!とりあえず二人がお似合いだっつーことはよく分かったっス!






20121123
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