02.触れた地面はあたたかくも冷たい





 昨日あれだけ自分に言い聞かせて帰ったというのに、学校に行くことに対して浮足立ってしまうこの心に、溜息を吐きたい気分だった。
 自分の意志とは関係なく、心が勝手に動いてしまう。





 夏休みが明けていつも思うのは “まだ休みが続いていればいいのに” ということ。何度も繰り返し訪れる長期休暇明けの登校では、必ず同じことを思ってしまう。そんな久しぶりの規則正しい生活に慣れないでいた私の背筋をピンと正したのは、新学期早々の席替えだった。
 夏休み前までの私の席は、窓際後ろから2番目。窓際の席は夏の日差しが眩しいけれど、外が見えて心地良い。授業に飽きる度にぼんやりと窓の外を見て目を細める、お気に入りの席だった。だから席替えのクジを引き終えて、そこから正反対の廊下側の席に自分が移動すると気付いた瞬間、どこかに閉じ込められてしまうような、そんな気分になってしまった。同じ壁でも、それが窓だと開放的に思えるのに比べて廊下を隔てた壁となると、途端に窮屈になる。1番後ろの席ならまだしも、中途半端な前から3番目。朝早く起きることも、長時間授業を受けることも、どちらにもまだ慣れなくてうんざりなのに。
 不貞腐れるように机にへばりつきそうになった体が持ち上がったのは、後ろで聞こえた彼の声のせい。思わず振り返れば、私の視線に気付いた彼が笑った。

「よろしくっス」
「う、ん。よろしくね」

 窓際じゃないのに、きらきらと眩しく見えた。


 今朝のこの気持ちは、席替えをして黄瀬くんの前の席になった時のものに似ている。
 何かが起きるんじゃないかというような期待感と、現状に対する浮遊感。思い返せば、黄瀬くんと同じクラスだと分かったその時にも感じていた。けれど同じクラスになれたからといってそれだけで仲良しになれるわけもなく、いつも女の子に囲まれている黄瀬くんと私は一クラスメイトである距離感を保ったままだった。私は、黄瀬くんを取り囲もうだとか親しくなろうだとか、そんな気持ちを抱いてはいなかったから。ただ、一緒のクラスになれたことがこそばゆくて、少しだけ落ち付かない気持ちになっただけ。だから浮足立つ感情も、徐々に冷静さを取り戻していたというのに。
 それなのに、またこの気持ちだ。そしてどの時よりも1番落ち着かない気持ちでいるのが今だった。どの時よりも、しっかりと自分に言い聞かせたはずなのに。

 昨日資料室を出る前に心の中で唱えた言葉をもう1度はっきりと心の中で口にして、私は校門をくぐった。

 この気持ちは恋じゃない。





 校門を過ぎた所で後ろから声をかけてきた友達と一緒に教室へ向かい、そのまま教室の前でお喋りを続けた。予鈴が鳴り、クラスが違う友達は自分のクラスへ戻り、私は同じクラスの友達と一緒に教室に入った。
 いつもと変わらない朝の時間。こうして友達と話していれば私の浮足立った心も落ち着いてくれるかと思いきや、どうしても落ち付いてはくれないようだった。話ながら、教室に近付いてくる男の子の中に黄瀬くんがいないかと視界の隅で探してしまう。そんなことをしなくたって、彼が近付けば女の子の反応ですぐに分かるのに。黄瀬くんが通ると反応するセンサーが、この学校中には張り巡らされている。校内だけじゃなくて、恐らく街中にも。
 私もきっと、そのセンサーのひとつに過ぎないのだ。反応しないようにと必死な、ぽんこつセンサーなんだろうけど。

 半分以上の生徒が着席している中、私の後ろの席はまだ空いたままだった。
 黄瀬くんはいつもたいてい朝練をしているから、教室に入ってくるのはギリギリなことが多い。練習が早めに終わっていたとしても、彼には寄り道をさせられる場所が多いせいで早めに教室にいることはまずない。
 それでも、そろそろ来るはずだ。

ちゃんおはよ」

 後ろから軽く叩かれた肩に驚いて振り返れば、黄瀬くんがいた。
 鞄を床に置き椅子を引く姿を見ながら、私は焦る気持ちを落ちつかせた。それでも、瞬きの回数が普段よりも多くなってしまっている。
 今日は前と後ろ、どっちから入ってくるんだろうと考えていた時に現れるんだもん、心の中を見透かされているような気分だ。

「おはよう」
「なに驚いてんの、オレ気配なかった?」

 この動揺は、どうやら上手く隠せていないみたいだった。首をかしげる黄瀬くんに、私は心の中で小さな悲鳴を上げた。

「う、ん」
「え〜?こんなにオーラあんのに?」
「う、うん」

 一度目は動揺して口籠ったのだけれど、二度目は流し目でわざとらしい表情を作って聞いて来た黄瀬くんに、わざと言い淀んで見せた。良かった、冗談を挟めば平常心を取り戻すことが出来る。
 そんな私に、黄瀬くんは格好つけていた表情を崩して笑い声を漏らしながら椅子に座った。

ちゃん、ひでー」

 格好つけた表情ももちろん格好良いけれど、それよりもこうして自然と緩んだ表情の方が私の胸にぐっとくる。
 どうしても、あの日を思い出してしまう。

 担任が入って来たのを合図に会話は途切れ、私は体を前に向けた。うるさい心臓を、少しずつ落ち付かせながら。





 予鈴が鳴り、1時間目の教科書を机から出していると背中をつつかれた感覚がした。振り返れば黄瀬くんが人差し指を突き出していて、シャープペンシルか何かだと思っていたものが彼の指だったことに心臓が跳ねた。今になって、触れられた部分が熱くなる。
 あんまり、不用意に触らないで欲しい。
 そんな私の気持ちも知らずに、黄瀬くんは不満そうに口を尖らせている。

「背中に何も貼ってないっスよ」
「え、昨日の?」
「そ。寝ちゃヤだ黄瀬くん☆ってやつ」
「そんな可愛いやつじゃなかったと思うんだけど」
「可愛いかったっスよ〜!貼ってくんないの?」
「私、朝から寝たりしないから大丈夫」
「オレが寝そうなんス」
「早すぎるでしょ!」
「朝練頑張ったんスもん」
「朝練頑張ったのに授業で寝てちゃ意味ないでしょ、ガムあげるから頑張って起きて」

 ポケットから取り出したガムを机の上に置けば、黄瀬くんは口の中に入れながら可愛らしく鼻を鳴らした。

「笠松先輩みたいなコト言うんスね。先輩はガムじゃなくて蹴りくれっけど」

 頬杖をつきながら欠伸をする黄瀬くんを横目に、教室に入って来た教師を見て私は前を向いた。号令と共に授業が始まる。

 後ろにいる黄瀬くんは、ちゃんと起きているのかな。後ろに回すプリントでもあれば様子を見ることも出来るのに残念ながらその機会は訪れてはくれず、授業の間中、私は背後の気配にばかり気を取られて眠くなるどころか授業にすら集中出来なかった。





「……寝てるし」

 授業が終わり席を立てば、黄瀬くんは机に伏せて腕を枕に眠っていた。髪に隠れて顔は見えないけれど、この状態で寝ていないわけがない。注意はされていないものの、先生にバレていないわけがないのに。

「りょーたぁ。あれっ寝てんの?ちょっと涼太!」

 横目に見ながら、起こすべきかどうか考えていると隣のクラスの女の子が黄瀬くんの名前を呼びながら教室に入って来た。甘い声と、甘い香水の香り。黄瀬くんの大きな背中にしがみつくように揺すり起こす彼女を視界の隅に追いやり、私は教室を出た。

 私が背中に貼り紙をしなくても、黄瀬くんにはこうして起こしてくれる女の子がたくさいんいる。いつもの光景だ。あの光景を見て、私の胸が苦しくなったり悲しくなることはない。
 これが、私が黄瀬くんに恋をしていない証拠。
 私はぽんこつセンサーを持っている程度の、ただのファンのひとり。だから黄瀬くんが女の子に囲まれていても悲しまないけれど、今日の放課後の居残りを楽しみには思ってしまう。自ら黄瀬くんを取り囲もうだなんて思わないけれど、ふざけた会話を交わすことが出来ると嬉しくなってしまう。
 ただそれだけのこと。これだけの、関係。

 いつもの光景を目の当たりにして、浮足立っていた足裏に急に地面の感触がした。




* * *





 放課後、教室を出ていく直前の担任に「プリントよろしく」と微笑まれ、嫌味のつもりで言ったであろう彼の言葉が私の心にはまったく響かなくて苦笑いが漏れた。
 だって私は、居残りさせられることを嫌だなんで思っていないんだもん。

ちゃん、申し訳ないんだけど、ちょーっとだけ遅れて行っても平気?ほんのちょっとだけ!」

 鞄を肩にかけ、今すぐにでも教室を出て行く気満々の雰囲気で両手を合わせて私を見下ろす黄瀬くんに、私は理由も聞かずに返事をした。理由なんて聞かなくたって、分かりきっている。

「うん、いいよ」
「ありがと!着替えたらすぐ行くから!いやちょーっとだけ、呼び止められるかもしんないけど」
「大丈夫、いってらっしゃい」
「じゃー後で!」

 さっと教室から出て行くその後ろ姿に、素早いなぁと思った。私が承諾するのを分かっている上でのお願い、あのポーズ。戻って来てくれたらラッキー、っていう感じかな、これは。

 昨日は突然近付いた距離に動揺して、今朝からなんだか落ちつかなかったけれど、1日過ごしてみたら分かる。嫌でも分かってしまった。
 放課後の時間を共有してみたって、私と黄瀬くんとの距離が今後縮まることはなく、クラスメイトとしての距離がほんの少し近付いただけだということを。それはきっと私の後ろの席が黄瀬くんだという、この座席の距離がくれる束の間のこと。
 相変わらず黄瀬くんは女の子に囲まれていて、愛想を振って、楽しそうに生活している。私はそんな黄瀬くんの生活の中で、否応無く視界に入ってしまう前の席の女の子。ただそれだけのこと、今だけのこと。ほんの少しだけ、何かを期待して浮き足立ってしまった自分が本当に恥ずかしい。
 でもそれを理解した今だからこそ、私は黄瀬涼太のファンなんだなぁ、なんてしみじみと思った。彼の中で私は “登場人物A” という名前のない存在なのだとしても、放課後のほんの僅かな時間を共有できるだけで十分だと感じてしまうんだから。

 私は黄瀬くんと、この距離で十分なのだ。




 案の定、黄瀬くんが資料室に顔を出したのは20分が過ぎてからだった。すぐ、と言うのには少し遅い。
 プリントを取りにこなかった黄瀬くんを怪しむ担任を適当に誤魔化し、重たいプリントの山を落としてしまわないように慎重に運び、作業を始めて数十分が経った所でようやく黄瀬くんが現れた。慌てたように開いたドアの先にいる黄瀬くんを見て、すっぽかされなくて良かった、というのが正直な気持ちだった。
 黄瀬くんなら、いつか笑顔で誘惑してすっぽかしてしまうんじゃないかと実はちょっぴり思っている。でも2日目からそれじゃあ流石に私も「最悪」と言わざるを得なくなってしまうから、ちゃんと来てくれて良かった。
 黄瀬くんは軽く練習をしてから来たのか、練習着を着て少し暑そうにしていた。

「ごめん!ちょっと遅くなっちゃった」
「ううん、いいよ。笠松先輩に怒られなかった?」
「いや〜もちろん怒られたっス、昨日も散々シバかれたのに」
「ほんともう授業中に寝たりしたらダメだよ」
ちゃんには言われたくないけどね〜」
「怒られた次の日からすぐに寝てる黄瀬くんには言えると思うけど」
「あれはちゃんが背中に紙貼っててくれないから」
「貼ってても絶対に寝てたでしょ」
「まーね、あの先生全然怒んないし」

 確かに、あの先生は生徒の授業態度に関心がない人だけど。少しも悪びれる様子のない黄瀬くんに、これ以上は何も言えなかった。おせっかいにもしつこく起きてることを強要する仲ではないし、私だって寝ちゃう時もあるし。
 そんなことを考えていると、黄瀬くんは私の手から重ねている途中のプリントを奪った。プリントだけを持てばいいのに、手が触れるようにプリントを奪ったのはわざとなのか、たまたまなのか、私が意識しすぎているだけなのか。
 私に色仕掛けなんかしてくれなくていいのに。こういうことをされると思わずドキドキしてしまって、それと同時に言い知れぬ罪悪感を感じてしまうから嫌だ。素直にドキドキして「黄瀬くんかっこいい」って思っていればいいのに、私には何故だかそれが出来ないのだ。ドキドキしてしまった自分をどこかで咎めてしまう。彼のファンなら、そんなの別に普通のことのはずなのに。
 やっぱり、私はぽんこつセンサーなのだ。

「今日は指切ってない?」
「毎回そんなドジしないよ」
「まぁまぁ、紳士な黄瀬くんが登場したからにはプリント重ねるのはオレにまかせて、ちゃんはホチキス係で」

 紙を触ってる時点で紙で指を切る可能性は0に出来ないんだけどなぁ。それでも特に反論する理由もなく、私はホチキスを握った。
 重ねたプリントをとんとん、と机に当てて端と端を綺麗に合わせて、ぱちんとホチキスで綴じる。私も黄瀬くんも要領を得て来たのか、昨日よりも進むペースが速いようだった。そして昨日と同じように、静かな空間が心地良かった。内心、つまんない女って思われていたらどうしようなんて昨日も思ったけれど、盗み見る黄瀬くんの表情は穏やかで、彼もこの静けさを不快に感じていなさそうなのは分かる。
 まぁ、その表情さえもポーズなのだとしたらもうどうしようもないけど。

「あーあ、あと8クラス分も残ってるっスね。オレあと8回シバかれなきゃなんないんだけど」
「え、遅れる度に怒られるの?」
「そう!ふつー事情説明したらその時だけじゃん?今日もシバかれたし、ぜってー明日も明後日もやられるっスよ」
「笠松先輩厳しそうだもんね」
「厳しすぎっス!つーかモデルをシバくってありえねーし」
「ふふ、まぁいいんじゃない?顔は無事でしょ?」

 何度か見かけたことがある、笠松先輩の容赦ない蹴り。楽しそうに見えるから、私はあれで良いんじゃないかなぁと思う。格好をつけた顔をしている黄瀬くんのことを私があんまり直視出来ないせいか、ああやって表情を崩している黄瀬くんの方が私は好きなのだ。

「そーいう問題じゃないっス!」
「楽しそうにしてるじゃん」
「楽しそう!?どこが!?」
「黄瀬くん手が止まってるよ」

 身を乗り出した黄瀬くんに顔を向けながらホチキを留め続けていると、黄瀬くんは何か言いたげに口を開いて、それから大人しく口を閉じてプリントに手を伸ばした。

ちゃんって、変なの」
「ひどい、自分がモデルだからって」
「顔の話じゃねーっスよ、なんかこう……まぁいいけど」

 それっきり口を閉じてしまった黄瀬くんを、今度は私がこっそり手を止めて盗み見た。
 私の何が、変なんだろう。
 変だと言われてショックなような、ほんのちょっぴり嬉しいような、不思議な気分だった。どんな意味であろうと少しだけ彼の感覚に私がひっかかったのだと思うと、それはきっと嬉しいことなのだ。彼が言い慣れた「可愛い」を言われるよりも、ずっといい。
 やっぱ私、変なのかもね。

「よっし終わった、オレにもホチキス貸して」

 全てのプリントを束ね終えた黄瀬くんが私に手を伸ばした。
 こういうのは女の子に上手く押しつけていなくなると思ってたんだけど、今のところ黄瀬くんは真面目にやってくれている。こんな失礼なことを思っていることがバレたら、怒られるだろうか。けれど私の中の黄瀬くんは、とても格好良いモデルであると同時に女の子に軽い男の子であるという、良い印象と悪い印象を併せ持っている。それでも、こうして放課後を一緒に過ごせることを喜んでしまうくらいには特別に思える良い感情が心の中にはあるわけだけど。
 私は自分の傍に置いてあったホチキスを掴んで黄瀬くんの手に乗せた。すぐに手を引いたのに、彼の手はしっかりと私の手に触れてからホチキスを握る。
 まただ。黄瀬くんのこういう所が困る。それなのにしっかりと喜んで反応してしまう自分の素直な心が、本当に嫌だ。彼がわざとこうして私の手に触れるようにしているのなら、女の子を喜ばせようと体に沁みついているその行動に溜息が出るし、例えわざとじゃなかったとして、こんな些細なことにあれこれ考えて反応している自分が滑稽で仕方がない。それに、もしわざとじゃないんだとしたら。いちいちこんなことを思われている黄瀬くんのほうが、きっと何十倍もうんざりしているはずだ。
 でも、これはわざとだ。私はそこまで初心な女じゃない。黄瀬くんがどんな男の子なのか、知らないわけじゃない。
 だから、ちゃんと分かってるよ黄瀬くん。

「ねぇちゃん」
「うん?」
「これ1日1クラスペースでやってたらマジで10日かかっちゃって先輩にドヤされっから、今日は無理だけどこのペースで行けば明日2クラス分やっても同じ時間で終われると思うんだよね」
「じゃあ明日は2クラス分やろっか。いつも遅れて行ったら練習量減っちゃうしね」
「助かるっス。あーあ、真面目にやってるトコ見て免除してくんねーかな」
「今のところその気配はないよね」

 この時間を楽しんでいる私と、1日でも早く終わらせてしまいたい黄瀬くん。その気持ちの違いを悲しいとは思わない。だって彼には、バスケが待っているんだから。

 早く部活に行かせてあげたいっていう気持ちは、変わらない私の一番の本心。





「鍵は私が返しておくから、黄瀬くんはもう部活行って」

 最後の1部を留め終えたのを見て口を開けば、黄瀬くんはすぐに立ちあがった。今にも教室を飛び出して行きたそうなその姿を見て、笑いが漏れる。
 スマートな黄瀬くんらしくない慌て方が、とっても良い。

「ありがと、ちゃんも気をつけて帰ってね」

 通り際、私の頭に手を乗せ二度撫でた黄瀬くんはあっという間に教室から去って行った。
 前言撤回、黄瀬くんは相変わらずとっても黄瀬くんらしい。

「あー……もう」

 結局、私は今日も机におでこを擦りつけて熱を冷まさなきゃならない。
 机に吸い込まれてくぐもる声よりも、心臓の音の方が耳につく。だけど、昨日とすべてが同じ気分になるわけじゃなかった。


 1日過ごせば、嫌というほどに分かる。
 私と、黄瀬くんとの距離を。
 触れる黄瀬くんの手には確かなぬくもりがあるのに、私にとってはとても冷たいものだということを。

 だけどそれでいいの。私は、この距離で黄瀬くんを見ているのが好きだから。むしろ冷たいその手の温度すら、知りたくもない。




 ほらね、これは恋なんかじゃないでしょう?




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