蛍くんとお姉ちゃんは第二王子とお姫様

月島家兄弟構成
長女:/長男:明光/次男:蛍








 今日は友達と約束があるの、と心底悲しそうにしていた姉ちゃんが男と歩いている後ろ姿を見つけて、僕は思わず足を止めた。






 部活が休みの日曜日。
 いつもより遅めに起きて朝ご飯を食べていると、母親に今日は出かけるのかと尋ねられ、口の端についたクロワッサンをぬぐいながら公開したばかりの映画を見に行くと答えた。すると母親ではなく、背後から大きな返事が聞こえてきて思わず眉間に皺が寄った。

「え!蛍それ見ちゃうの!」
「朝からうるさいな」
「それ私も見たいのに〜。忠と行くの?」
「ひとりだけど」
「え〜!?私も行きたい!」
「奢りならついてきてもいいよ、映画の後にケーキもつけて」
「え〜むりだよ〜今日友達と約束あるんだもん〜」
「ハァ?じゃあ行きたいってなんなの」
「違う日に行こ」
「それこそむり」
「蛍のケチ!!」

 奢ってもらえないのは惜しいけど、今日見ると決めていた予定を変える気にはなれなかった。寝癖のついた起き抜けの姿で急に騒いだかと思えば、姉ちゃんは不満そうな顔をしたままダイニングから出て行こうと背を向けた。その後ろ姿に母親が「朝ご飯は?」と声をかければ「遅刻しちゃいそうだからいらない〜」と未だに残念そうな声が返ってくる。パジャマの裾が捲れているのを見ながら、僕は牛乳を飲み干した。

 この人、もういい歳だと思うんだけど。いつまでこんなんなワケ?






 弟と映画を見に行きたがってないで、彼氏とでも行けばいいでショ。

 確かに今朝、そう思った。その気持ちに間違いはない。
 今まで付き合ってる男の話を聞いたことがないことの方が不自然だったのだ。話を聞いたことがないからといって、姉ちゃんに彼氏がいない理由にはならない。けれど同じ屋根の下で暮らしていれば、彼氏がいるかどうかはなんとなく分かるはずだ。そして僕は、姉ちゃんに彼氏はいないと、そう思っていた。けれど今、数メートル離れた先にいるあの後ろ姿は間違いなく姉ちゃんであって、その隣にいるのは背が高い長髪の男だった。どことなく柄の悪そうな、兄ちゃんとは真逆の、見るからに好青年ではなさそうな雰囲気。
 “友達”と約束があるって言ってたクセに。
 ああいう男がタイプだとは思わなかった。姉ちゃんの男の趣味なんて別に知りたくもないけど、普段テレビを見て騒いでる男の傾向とはちょっと違うように感じた。
 そんなことよりも、だ。こんなことなら予定通り映画を見ていれば良かった。家を出る瞬間までもしつこく残念そうに僕に声をかけてくるから、仕方なく今日は映画を見るのをやめてあげたのに、映画を見るのをやめてCDショップに行こうとしたせいで嫌なものを見てしまった。映画も逃すし、気分悪いものは見ちゃうし、姉ちゃんのせいで散々だ。
 別に姉ちゃんに彼氏がいるのが嫌なわけじゃない。身内のそんなところを見たくないってだけだ。
 夕方に上映されるのを見てから帰ろう、そう心に決めて、とりあえず二人の手前にある行きつけのCDショップにさっさと入ってしまおうと目を逸らしかけた時、不自然な姉ちゃんの動きに再び視線が二人の背中へと戻ってしまった。慌てたように男から距離をとる姉ちゃんの腕を、男が強引に引き寄せていた。困ったように顔を横に振る姉ちゃんの表情を見て、僕はあの男が姉ちゃんの彼氏ではないことを確信した。
 あの顔は余所行きの顔で、身内に見せる顔じゃない。姉ちゃんが彼氏にあんな顔を向けるわけがないのだ。

 それに気付いた瞬間、僕の足はCDショップを通り過ぎて二人の元へと向かっていた。
 あの男が友達でも彼氏でもないんだとしたら、約束してた相手はどこに行ったんだよ?なんでこんなところで昼間から変な男に絡まれてるんだ。それこそいい歳なんだから、あんな奴くらい適当に撒けよ、と舌打ちをしたい気持ちになりながら僕は姉ちゃんの腕を引いた。柄の悪い男が掴んでいる方の腕を、男から振り払うように、そして姉ちゃんを自分の方へ引き寄せるように。

「人の女に手ェだすなよ」

 こいつがチンピラとかヤクザとかだったらマジ勘弁してほしいんだけど。僕の方が背が高いおかげで少しは威嚇できるだろうか、それにしてもこの男もなかなかに背が高い。そんなことを思いながらなるべく低い声を出して男を睨めば、僕の胸に寄りかかった姉ちゃんと、目の前にいる男の素っ頓狂な声が同時に響いた。

「「え……えっ!?」」

 その声を聞いて、僕は今すぐここから消えたいと心底思った。






「え、つ、つつつ月島の彼女!?いや、手ェだしたわけじゃないからこれは!誤解!」
「蛍……今、俺の女って言った?わたしのこと?」
「言ってない死んで」

 姉ちゃんの隣にいた男は、チンピラでもヤクザでもなく、部活の先輩である東峰さんだった。制服を着ていても高校生に見えないけど、私服を着ていると更に高校生には見えない。後ろ姿なんて特にそうだ。姉ちゃんの腕から手を離し慌てふためく東峰さんの姿を見て、少しは高校生らしい雰囲気どこかに残しておけよと的外れな苛立ちを感じずにはいられなかった。
 それよりも今すぐ殴り倒してやりたいのはコイツだ。

「ねぇねぇ、蛍」
「ほんとに、ふざけないでほしいんだけど」

 弟に彼女扱いされて喜ぶ姉がどこにいる?
 嬉しそうに僕の腕を揺すりながらにやにやとした顔を向けてくる姉ちゃんの腕を憎しみ込めて握れば、ふざけた顔もすっと引っ込み痛みで歪んでいた。先輩にプライベートを見られて恥ずかしくなっているのだと勘違いをしているらしい東峰さんは、痛そうに騒ぐ姉ちゃんを見ながら僕を宥めるようにおどおどとしている。東峰さんが考えている以上の羞恥の事実があることを、きっと気付いてもいないからそんな態度でいられるんだろう。
 それならいっそ、彼女だということにしてこの場を去る方がいいのかもしれない。どうせまた姉ちゃんと東峰さんが顔を合わせることもないだろうし、東峰さんがこのことをペラペラと喋るようにも思えない。

「つ、月島、彼女にそんな乱暴しちゃ…ホントまじで浮気とかじゃねーから!」
「蛍、ほんと折れる!」
「……スイマセン、東峰さん。後で連絡します」

 面倒なことになる前に、と腕を離し「帰るよ」と声をかければ、姉ちゃんは大人しくついてくる気配もなく東峰さんを見上げていた。
 この人何でこうなんだろう、何でいつも僕がペースを乱されなきゃいけないわけ?
 余計なことを言う前に黙らせないと、そう思って慌てた僕がバカだった。

「蛍のお友達だったんで────」
「姉ちゃん!」
「……え、姉ちゃん?」

 普段から「ねぇ」とか「ちょっと」と呼びかける以外の呼び名は「姉ちゃん」しかない。兄ちゃんは姉である姉ちゃんのことを昔は「ちゃん」と呼んでいて、いつの間にか「」と呼ぶようになった。今でも「ちゃん」と呼んでいるのを聞くこともあるけど、恥ずかしげもなくそんな風に僕は名前で呼べない。子供の頃こそ兄ちゃんと同じように「ちゃん」と呼んでいたこともあるけど、成長するにつれそんな風に呼ぶこともなくなっていた。
 けれど今はそれが仇となった。黙らせようと咄嗟に声をかけたせいで、一番隠しておきたかった「姉」であるという事実がバレてしまったのだ。

「えっ、ええええええええ!?月島のお姉さん!?」
「なになに?なんでさっきからそんなに驚いてるの?」

 この状況に平然と、むしろ嬉しそうにしているのは姉ちゃんだけだ。東峰さんは驚き続きだし、僕は今すぐ消えたいと思い続けている。

「蛍の先輩だったんですか?」
「あ、ハイ、バレー部の3年です」
「え!?OBじゃなくて高校生!?」
「は、はい……」
「うそ!私と同じくらいだと思ってた!」

 姉ちゃんも無事にやっと今驚いているようだけど、心底どうでもいい。そんな驚きは僕も東峰さんも聞き飽きていて、そんなことよりも重大なことがあるということを、この能天気な女は気が付かないらしい。「蛍がいつもお世話になってます」とにこにこと挨拶をする姉ちゃんと僕を交互に見て眉尻を下げる東峰さんには、僕が今すぐここからいなくなりたい理由がようやく分かったらしい。察しの良い人で良かった。これが田中さんとかだったら本当に最悪だ。
 そもそも相手が田中さんだったらすぐに気付いてたケド。あの人ハゲだし。

「月島……なんか、勘違いさせたみたいで悪いな」
「イイエ、こちらこそ頭の悪い姉が何か迷惑かけてたみたいでスミマセン」
「頭の悪いって何?ひどいんだけど!」
「その状況の飲み込めてなさを言ってんの」
「状況読めてないのは蛍でしょ?大好きなお姉ちゃんが絡まれてるって勘違いしてさぁ」
「ハァ?マジでいい加減にして」
「月島!大丈夫、オレは分かってるから!オレが悪いから!」

 東峰さんに状況が伝わっているなら、もうこのバカを置いて帰ってもいいだろうか。僕がキレている理由に気付きもしなさそうな姉ちゃんを冷たい目で見下ろしていると、無意識に溜め息が漏れた。

「えっと、あず…?」
「あ、東峰です」
「東峰くん、これあげる」
「え!?いやいや、これ月島が欲しかったやつですよね」

 CDショップの袋を差し出す姉ちゃんに、東峰さんは首を横に振った。姉ちゃんが持っている袋は、僕が行こうとしていたCDショップのものだった。何故突然それを東峰さんにあげることになるのか、それが僕が欲しかったというのはどういうわけなのか。
 そもそも、何故ふたりが一緒にいて、僕が勘違いしたひと悶着はなんだったんだ。

「だって東峰くんも欲しかったでしょ?蛍の先輩なら、いつもお世話になってるからそのお礼」
「いやでもこれは、他んとこで探すからいいっスよマジで」
「なんなのそれ」
「蛍が欲しがってた、限定版の、CDですう」

 これ見よがしに袋からCDをチラつかせて僕に意地悪な顔をする姉ちゃんのガキくさい姿に色んな意味で恥ずかしくなる。
 確かにそのCDは僕がずっと探していた限定版のCDだ。もう廃盤になっていて中古でしか手に入らないもの。東峰さんもこのバンドが好きだなんて知らなかった。

「東峰さんも好きだったんですか、このバンド」
「おお。さっきそこのショップで見つけて、月島のお姉さんと同時に手にとっちまって」
「運命の出会いかと思っちゃったよね?」
「え!?あ、ええと……」
「あのさあ、僕の先輩であってアンタの友達じゃないんだけど」

 馴れ馴れしくしないでよ、と姉ちゃんが手にしている袋を奪い、僕は東峰さんへと差し出した。
 このCDは正直かなり欲しい。でも、この姉がかけた迷惑を考えたら東峰さんへと譲るのが妥当だろう。僕にも迷惑をかけたお詫びとして一週間以内にどこかで探し出してもらうから、それまで少しの我慢だ。

「いいよ月島、オレはあったらいいな〜くらいで探してたから」
「この人にまた探させるんでいいです、貰って下さい」
「え!探さないよ、今日たまたま見つけただけだもん」
「もう黙ってて」
「ねぇ東峰くん、蛍こんなんで部活うまくやってるの?忠いるから大丈夫かなとは思ってるんだけど」
「あ、山口のこと知ってるんスね」
「うん、私の可愛い弟3人目!東峰くんも私の弟にな────」
「黙る、っていう単語分かんないの?」

 本当にいい加減にして欲しい。
 もういい加減頭にきた僕は、姉の口を塞ぎ、無理矢理に腕を引いた。今すぐここから消えた方がいいのは僕じゃなくてこの人の方だ。
 そういえば、兄ちゃんがまだ実家にいた時に兄ちゃんの友達ともよく騒いでいたのをふいに思い出した。この人は年下の男は全員自分の弟だとでも思っているのだろうか。山口のことを3人目の弟だと言うことはまだしも、それ以外の弟がいるなんて誰が認めるもんか。

「ご迷惑おかけしました。また明日部活で」
「ちょ、っと蛍!」

 ぎりぎりと容赦なく掴んだ腕を引きながら早足で進めば、後ろからはバタバタとついてくる足音が聞こえる。
 イライラする。
 世の弟というのはこんなにも姉にいらいらさせられるものなのだろうか。それともこの姉がちょっとおかしいせいなのだろうか。後者の割合の方が大きい気しかしない。

「け、蛍!パンプス脱げた!」

 その言葉に足を止めれば、後ろには情けない顔をした姉ちゃんがいて、その数メートル後ろには姉ちゃんのものであろう靴が転がっていた。

「もうほんと、なんなの?」
「蛍に言われたくない」

 掴んでいた手を離せば、姉ちゃんはひょこひょこと歩いて落とした靴を拾いに戻ろうとした。

「そこにいて」

 さっさと追い抜いて靴を拾えば、踵の先が欠けていた。やたらと足音が大きかったのはこのせいだったのか。

「なんでこんな靴はいてんの」
「さっき東峰くんといるときに隙間にハマって欠けちゃったの」
「どんくさ」
「それで慌てて東峰くんが助けてくれたところに蛍が割り込んできたんだよ」
「……」
「蛍もどんくさいね?」
「一緒にしないでくれる」
「あれあれ?シンデレラと王子様ですかー?」

 欠けていようとも、とりあえずはこれを履くしかない。しゃがんで靴を地面に置くと、頭上で朗らかな声が聞こえた。
 今日は一体どういう日なんだ。

「明光!」
「二人でデートとかずりぃじゃん。俺もまぜてよ」
「まざってよ〜私の彼氏DVなんだもん〜」

 そう言って兄ちゃんに見せた手首は、確かにうっすらと赤くなっていた。バツの悪さを感じていると、しゃがんでいる僕の頭を兄ちゃんがポンポンと撫でた。
 こういうのを止めてと言っているのを、この上の姉兄はいつになったら分かるんだろうか。

「DVな奴はなかなか跪いてくんないよ?」
「跪いてないから。さっさと靴はいて」
「てか何してたの二人して」
「それがさっき蛍がね」
「もう片方の踵も折るよ」
「も〜!蛍はいつになったらシャイな性格直るの!」
「シャイじゃないから」
、ヒール折れたの?」
「うん、さっきちょっとひっかけちゃって」
「じゃあ第一王子が新しい靴をプレゼントしてあげよう」
「ほんと!?やった〜流石第一王子!」
「ちょっと、僕が二番手だっていうの」
「「だって次男じゃん」」

 普段は不必要なほどかまってくるくせに、こういう時は息を揃えたように僕を一番下の弟扱いをしてくるからムカつく。そして人のことをデートだなんだと言う癖に、自分の方がよっぽど姉ちゃんと仲が良くて恋人同士かのような空気を出しているからキモチワルイ。
 歩きにくそうにしながら兄ちゃんの腕を掴む姉ちゃんと、振り返って僕に手招きをする兄ちゃんを見ながら、この二人は何故変わらないんだろう、と思った。僕が物心ついた頃から、いやきっと僕の記憶が残るずっと前、僕が産まれた頃から、この二人はこうして笑って、僕に手を差し伸べる。僕がどれだけそっぽを向いても、手を跳ね除けても、この二人は変わらない。
 僕をキモいキョーダイの一員にしないで欲しいんですけど。
 小さくそう呟きながら、僕は姉ちゃんの隣に並んだ。

「王子、僕も新しいシューズ欲しい」
「ちょっと、兄ちゃんそんなにお金持ちじゃない」
「兄ちゃんじゃなくて王子なんでしょ」
「ねえ王子、この後3人で映画見に行こうよ。第二王子がお姫様のピンチにかけつけたせいで映画見損ねたみたいだから」
「さっきから僕にはお姫様が見当たらないんだけど」
「え、なに蛍ってばのピンチを助けたの?」
「助けてない。ていうか友達と約束あったんじゃないの」
「それが体調悪くて来れないって言われちゃって」
「だっさ」
「蛍は相変わらずちゃんに冷たいなあ」
「ね〜、明光くんを見習ってほしいよね」
「二人とも距離近くてキモイ」

 そう呟けば、きょとんとしたまん丸の瞳が二人分、僕を見つめた。こういうそっくりな表情を見ると、姉兄なんだなぁと改めて思う。僕もこの二人に似ているのだろうか。
 こんなとぼけた顔を僕がすることはないから、確かめようもないけど。

「も〜ホント蛍はかわいいねぇ」
「ハァ?キモイって言ってるんだけど、そういう発言も含めて」
「ちょい、お前そっち側行け、蛍が真ん中が良いって言ってる」
「そんなこと一言も言ってないんですけど」

 言っていない、というのに姉ちゃんは僕の腕を掴んで、兄ちゃんはそれを確認してから僕の隣へと移動した。
 何も変わらない。けれど、こうして3人で歩くのは久しぶりだった。よく3人で過ごしたあの日々はもう、遠い昔なのだ。それなのに今も鮮明にあの日のことを思い出せるのは、僕がまだガキだということなのだろうか。いつかもっと大人になれば、いくら二人が変わらないとしてもこうして3人で並んで歩くこともなくなるのかもしれない。

 僕らしくもないことを考えてしまうのは、姉ちゃんの彼氏を見て少し驚いてしまったからに違いない。彼氏じゃなかったみたいだけど。

「僕、映画の後はケーキ食べたい」




 だからたまには、こんな日があっても許してあげるよ。
 あと何回訪れるか分からない、3人でのデートをね。








翌日の部活で

「大地さー、年上と年下どっち好き?あ、大地はタメか」
「なんの話だ?」
「いやー、旭が急にオレ年上タイプかもとか言い出すからよ」
「急に恋バナしてくるとか女々しい奴だなホント」
「なぁ、大地は?タメ派?」
「いや別に、そんなんねえよ……」
「ほんとか〜?」
「そういうスガはどうなんだよ」
「オレは好きになった子がタイプ☆」

 女々しい、と言いつつ楽しそうに話している菅原さんとキャプテンの話を小耳に挟み、僕は旭さんの背後に近づいた。

「まさか僕の姉のことじゃないですよね?」
「ヒッ!な、つつつつつつ月島!?え!?な、なんの話」
「いつから年上がタイプになったんですか?昨日からですか?」
「い、いやいやいやいやいやいやいや!ち、違う違う!」

 その動揺は図星だろと思いながら脅しをかければ、タイミングが良いのか悪いのか、山口が僕を呼びに来た。

「帰らないの?ツッキー」
「じゃあ東峰さん、お疲れ様デス」

 弟の定員も達してるんで諦めてくだサイ、そう言い残して体育館を出れば、不思議そうな顔をした山口がついて来た。

「旭さんとなんの話してたの?」
「第三王子には関係のない話」
「え……王子?オレが!?」

 どういうこと!?ツッキー!?という山口に一言うるさいと告げればすぐに口を閉じた。

 うちのお姫様もこれくらい従順だったらいいんだけどね。







20180314
2style.net