condescending smile





 夕食も終え、灯りがともる談話室で羽ペンを握りながら羊皮紙とにらめっこしている。それを横で眺めながら紅茶を飲むシリウス。僕はそんな二人と背中合わせのソファに座りながら甘いミルクティーを飲んで、読書タイムを満喫していた。
 すると突然叫びながら立ち上がった。そろそろかな、と思っていたのは僕だけじゃなくシリウスも一緒のようで、僕らは驚かずにに視線を向けた。談話室にいた生徒は突然叫ぶに驚いていたけど。

「うあああああああああもう無理っ!」
「休憩する?」
「休憩するとかじゃないし!なに気取ってんの!」
「な、気取ってねぇよ!」
「気取ってんじゃん!紅茶のカップ持ちながら微笑んでくれちゃってさ!」
「別に…フツーだろ!」
「自分がいつも格好良いとでもいいたいわけ!?」
「ひとっことも言ってねーよ!」

 宿題が出来なくてが騒ぎだすのはよくあることだった。出来ないと落ち込む時もあれば泣きついてくる時もあるし、今回はどうやらイライラと八つ当たりする時らしい。はシリウスを見下ろしながら酔っ払いのいちゃもんのようにシリウスに絡んでいた。

「自分は課題終わったからってさ!なんで優雅に紅茶なんか飲んでんの!」
「お前が早めにやってないのが悪いんだろ」
「早めにやってたって終わんないもん分かんないもん!」
「とりあえず一回休憩しろって」
「そんなことしてる時間なんてないの!そんなことしてたら終わんない!」
「でももう集中力切れてんだろ?」
「……もうやだ」
「休憩したら教えてやるから、どこが分かんないんだよ?」
「どこが分かんないかも分かんないの!」

 もうやりたくない!そうの声が聞こえたかと思えば、ボフッと僕の座っていたソファの隣が沈んだ。顔を向ければ、が倒れこんでいた。は僕が膝に乗せて読んでいた本を床に落として、自分の頭を僕の膝の上に乗せて僕の腰に抱きついた。

「どうしたの
「シリウスがいじめる」
「いじめてねーだろ!つか何リーマスにくっついてんだよ!」
「自分の格好良さとか課題が終わってる優秀さとか見せ付けてくる!」
「そんなことしてねぇだろ!とりあえず離れろって!」

 シリウスは自分の座っているソファから乗り出しての肩を掴み僕から引き離そうとしていたけれど、が僕にしがみつく力は予想以上に強くて中々引き離せないようだった。やれやれ、と思いながら僕はミルクティーに口をつける。読んでたページ、何ページだったっけなあ。というか乱暴に落としてくれちゃって、痛んでたらどうしてくれるの。図書館のだからいいけど、もし怒られるならが怒られてよね。
 シリウスは座っていたソファから僕とが座っているソファまで回り込んで来たけれど、は僕から離れる気がないようだった。

「リーマス甘い匂いするからイライラするの落ち着く」
「なら俺がミルクティー淹れてやるから!離れろ!」
「やだ、リーマスが入れてくれた方が美味しいもん」
「じゃあホットチョコレート!」
「リーマスが淹れてくれた方が美味しいもん」
「お前な…!じゃあリーマスがミルクティー淹れるから離れろよ!」

 僕は一言も淹れてあげるだなんて言ってないんだけど。まあ、のお願いだったら淹れてあげてもいいけど、シリウスの命令で淹れるのなんてごめんだよ。そんなことを思っていると僕の腰に回されたの腕の強さが増した。

「いらないもん、今はリーマスの甘い香りとぬくもりがいいの」
「おま…彼氏の前でいい度胸だな!リーマスも男のクセに甘い香りとか言われて黙ってんなよ!」
「なんで?光栄だよ。それに僕にやつあたりするのはやめてくれる」

 イライラを隠そうともせず、髪をガシガシと掻き乱しながらシリウスはと、僕に怒鳴った。僕はなにひとつ悪くない、全部がとばっちりだというのに。本を静かに読んでいたかっただけなのに、最初から部屋で読んでおけば良かった。僕は抱きついているの頭をサラリと撫でて溜息をついた。

「僕は静かに本が読みたいんだけど」
「私静かにしてるよ…シリウスがうるさいの」
「あのなあ…!」
、宿題は?やらないと眠れないよ」
「…分かんないんだもん」

 ようやく抱きつく力を緩めて、顔をあげたかと思えば弱々しい声に比例するようにの瞳には涙がいっぱい溜め込まれていて、今にも溢れそうだった。どうやら今日はイライラと八つ当たりした後に、泣きついてくる日だったらしい。僕は眉根を下げて、に微笑んだ。

「シリウスが教えてくれるって言ってるよ」
「……うん」
「僕がミルクティー淹れてあげるから、ほら頑張って」

 はもぞもぞと起き上がり、チラリとシリウスを見た後にまた僕を見た。

「シリウスが怒ってる…」

 そりゃそうだ。宿題をしているの横で大人しく紅茶を飲んでいただけで、気を利かせて休憩を促したり、なだめて宿題を教えてやると八つ当たりされても優しく優しくしてあげていたのに。目の前で他の男に抱きついたあげく落ち着くと言ってみたり褒めてみたり。挙句の果てには最初から宿題を教えてやると言い何度も何度も声をかけたのにも関わらず僕の一声で宿題をやる気を起こされたとあっちゃあ、怒りも爆発を通り越してふつふつと腹の中で煮えたぎるってものだよね。
 僕は床に無残にも落とされた本を拾い上げてから、仕方なしにに小さな声で耳打ちをした。
 シリウスの怒りや何やらは僕にはどうでもいいけど、宿題を終わらせられないは可哀想だからね。

「シリウス、10分ぎゅうってしたら、宿題教えてくれる?」

 はソファから立ち上がって、微かに震えてるんじゃないだろうかと思われるほどの怒りをかかえるシリウスの首に腕を回して抱きついた。そして僕がアドバイスした通り「10分くらいシリウスと休憩したらいいよ」を実行することにしたようだった。まだ多少イライラしながらも、大人しくの腰に腕を回すシリウスを見ながら僕は部屋へ戻った。
 またの集中力が切れた時にミルクティーを持って来ることにするよ。








「あれリーマスもう寝るの?」
「ううん、談話室で本読んでたんだけど邪魔されちゃって」

 ピーターに返事をしながら僕はベットに腰掛け本を開いた。

「…それにしてはなんだかご機嫌だね?」
「うん、まあちょっと優越感」
「……?」






20091231
 condescending smile 優越感のこもった笑み
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