alone together





 ぽかぽかの太陽が照りつける芝生の上。
 ここには大嫌いな虫がいる
 だけど、大好きな人がいる。

 ぽかぽかの太陽が照りつける芝生の上。
 すごく気持ちが良くて眠い
 だけど、眠らないように頑張るの。





「あーーー」
「なんだよ急に」
「ねむいの」
「なら黙って寝ろ」
「んー…でも、寝ない」

 少しでも油断すれば、今にも寝てしまいそうで私は声を出した。それでも眠くて、瞼が下りてくるのに抵抗が出来ない。視界はどんどんと狭まっていく。けれど抵抗できないのは眠気のせいだけではなくて、眩しい太陽の陽射しが芝生で寝転がる私達を照らすから。背中に感じる柔らかい芝生、ブランケットのように体をあたためる陽射しは私を眠りへとゆるやかに誘う。あぁもう、意識を手放してしまいそう、現実が私のからだからぼんやりと離れて行くのを感じる。なのに、となりにいるあいつの存在だけはこれでもかってほどクリアに私の体は感じていた。

 だめ、寝ちゃだめよ私。だって今日は課題を終わらせなきゃいけない。まだ3つも残っているじゃない。…え、あと3つ?そんなに残っていたの?やだ、嫌なことを思い出しちゃった。ここで今寝てしまったら、私は一体どれくらいの時間眠り続けちゃうんだろう。30分?1時間?それだけならまだ良い方。だって、きっと起きてから課題をやろうという気分は起きないだろうし、頭だってぼうっとしたままなのは目に見えている。あぁ、なのにもう、私の瞼は完全に閉じられてしまった。私を眠りへと誘う力は思っている以上に強い。

「んーーーー!」
「だから、何だよ急に!」
「ねむいのー」
「俺も眠いから黙って寝ろ」
「でも」
「いいから寝ろ。俺の眠りの邪魔をすんな」
「嫌、寝ない。シリウスも寝ちゃだめだよ」
「なんでだよ」

 なんで?なんで寝ないのかって?そんなの愚問だよシリウス。理由はとても簡単。私はまだ課題を3つも残したままだから。でも、後でシリウスが手伝ってくれるのなら寝てもいいかな、と思うの私。瞼も完全に閉じちゃったし、眠りに誘う芝生と太陽の力は強いし。だけどやっぱり、どうしても寝たくない理由が私にはあるのよ。ねぇシリウス、気付かない?

「だいたい、眠いのに寝ない理由がどこにある」
「いいから、寝ちゃ駄目だよ」
「だから、なんで!」
「虫に刺されちゃうかもよ?」
「お前がさっき虫除け魔法かけてくれただろ」
「自分にしかかけてないもん」
「うっお、マジかよ!?」
「うそ」
「………」

 瞼を閉じていても、シリウスが慌てて起き上がったのが私には分かった。そして今きっと私のことを怒ったような、呆れたような、そんな瞳で見下ろしているはず。寝ないように頑張っている私の横で、寝る寝るって言うから眠気覚ましにちょっと嘘をついただけ。私は手を伸ばしてシリウスの腕を引いた。

「ちゃんとシリウスにもかけてあるから、ほら寝転がって」
、お前何がしたいわけ?」
「シリウスは、寝たいの?」
「眠いからな」
「私も眠い」
「だから寝るぞって言ってんだろ」
「でも、寝ないの」
「だから…!」
「ね、ずっと喋ってて」

 私の隣で寝転がって、ずーっと喋っていて。そしたらきっと私は寝ないから。課題だってきっとどうにかなる。そんな私に、わけが分からない、とでも言うようにシリウスが溜息をついたのが聞こえた。どうしてシリウスには分からないのかな?私の隣にこうやって寝転がっていたら、同じ気持ちにならない?同じなのは、眠りへと誘われていることだけ?

「なんで寝たくないんだよ?」

 あぁやっぱり。シリウスには分からないみたいだった。それなら私が答えてあげるから、そしたら寝ないでいてね。

「シリウスと、ふたりだからだよ」


 大好きな人と、世界でふたりきりな気分だから。
 寝ちゃったらもったいないでしょう?
 たとえ課題がたくさんあっても、
 たとえ強い力で眠りへ誘われようとも、

 私のこのとても幸せな気分には変えられないの。


 ふたりきりになったことなんて今までだってあったのに、どうしてか今は世界でふたりきりな気がするの。静かに耳をかすめる風と、背中に感じる柔らかい芝生にブランケットのように体をあたためる陽射し。それと、隣にいるシリウスの呼吸と心音、愛しいその声。私達ふたりだけの世界になったみたいじゃない?それは寂しいものなんかではなくて、私とシリウスだけの甘く愛しいあたたかい世界。その世界が私にはとてもあたたかくて愛しくて、幸せで仕方がないの。

「そ、れはどーいう意味だよ」
「………」
「…?」
「………」
「おい?…なっ、寝てるじゃねーか!」


 ぽかぽかの気持ちのいい太陽の下で、あなたと私はふたりきり。
 幸せな世界の中で、私は幸せな夢を見た。






20090701
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