CRY MORE





「おわ、なに泣いてんだよ」
「シリウスが、死ん、だのっ」
「………」

 じゃあ今ここに立っている俺は…誰だ?
 どんよりと雲が広がる昼下がり。晴れてりゃもう少し暖かいだろうに、どうにも雲が邪魔をして外はひんやりとしていた。




 休日の午後、ジェームズたちと寮へ戻ってみればデカいケーキをかかえたリリーがひとり。お前それ一人で食ったらデ、と言ったところでリリーに右、ジェームズに左の腹を思い切り蹴られた。…このバカップルめ!

がいないの」
「はぁ?(くっそ痛えな)」
「3時に一緒にケーキ食べる約束してたんだけど、どこにもいないのよ」
「一緒にいたんじゃないのかよ」
「いたんだけど途中で寝ちゃって、その間に本を返しに行ってたらいなくなっていたの」
「そのうち戻って来んだろ」
「シリウス、あなたの彼氏でしょ?探してきてくれない?」
「だから、そのうち戻っ」
「ね、シリウス?」
「わかったよ!」

 自分が早くケーキ食いたいだけじゃねーか!と言いたかったのを飲み込み寮を出た。悪いが俺は学習能力があるんだ。とは言っても、この広い敷地内で探し出せるのか。トイレとかにいたら探しだせねーぞ。




 なんて思いつつ、いつだかあいつがお気に入りだとか言っていた中庭に来てみれば案の定は木の下で膝をかかえて座っていた。近づいてみれば顔をぐちゃぐちゃにして涙の大洪水。なにがあったのかと思えば…俺が死んだ?

「じゃあ俺はゴーストか?」
「っ、うう、っく」
「…ハァ。夢だろ?」
「ち、がうっ」

 いや────────夢だろ?俺は死んだ覚えは無い。俺がしゃがんで頭を撫でてやると、は俺に抱きついてきて、その勢いで俺はを抱いたまま後ろへと倒れた。

「大胆だな、おじょーさん」
「バ、カ…シリウ、ス!」
「バカはお前だ。人を勝手に殺すな」
「っ、っく…ひっく」
「ホラ、生きてるだろ?」

 俺の心臓の音が聞こえるように、ぎゅうとを抱きしめた。これで泣きやむかと思えば、は更に泣きだした。

「シリウス、死っん、じゃ、う」
「だからなんで…死んで欲しいのか?」
「そんなわけないじゃない!!」

 は急に起き上がって声を荒げた。俺が驚いているとボタボタと涙を落としながらはまた俺の胸にへばりついた。忙しい奴だ。

「シリウスが、死んだのっ」
「夢なんだろ?」
「でもっ…シリウスは死ぬわ」
「そりゃあ不死身じゃねーからな」
「っ、あたしは、それが悲し、いのっ」
「だからってこんなに泣かなくても」
「死なないでよシリウスっ」
「俺は簡単には死なねーから安心しろ」
「…嘘、つき。どうやっ、て死ぬかなんて人間わか、んないよ、っ」

 じゃあ、どうすればいいんだ。今ある俺のこの体温も、未来の約束も、には何も通じない。なにを言っても泣き止まない。俺には「死ぬ」という人間の、世界の仕組みを変えるなんて不可能だ。そんなこともわかっていて、だからこそ、こうやって泣いているんだろう?
 はこんなにも胸を痛めて泣いているというのに、俺はなんだか嬉しくて、胸が甘く疼いた。
 けれどそんなものに浸っている暇はない。俺の今の使命は、の涙を乾かすことだ。

、いい加減泣き止まないと頭痛くなるぞ」
「そんな、の、どうだっていいの、シリウスが、死んだことに比べ、た、ら」
「俺は生きてる」
「っう、っ」
「どうやったら泣き止むんだよ」
「ひとつ、だけ」
「ん?」
「泣き止む、方法、ひとつだけあるの」
「おう、なんだ?どうすればいい?」
「あ、たしがシリウスなんて死んでも、どっ、うでもいいって」
「………」
「シリウスのこと、きっ、らいになれば、泣き止め、る」

 そ、れは────────




、悪い。ずっと泣いててくれ」

 こんなに胸を痛めて泣いているの涙を、止めることの出来ない俺を許してくれ。
 
 泣いているお前が俺はとても愛しいよ。






20070716
2style.net