闇を抱いて





わたしは急いで骸さんのところへと走った。



「骸さん、骸さん、骸さん・・・っ!」
「おや、どうしたんですかそんな顔をして」
「そんな顔って・・・変な顔・・・ですか?」
「クフフフ、とても苦しそうな良い顔です」

 苦しそう、わたしは顔に出ていたのだろうか。変な顔という意味ではなくて良かった。骸さんが「良い顔です」と言ったのを聞いてわたしは少し楽になる。骸さんの言う通り 苦しみ から。けれどわたしの苦しみはまだまだ消えなかった。これが 苦しい という言葉で表せられるものなのかもわからないけれど。

「骸さん、骸さん」
「そんなに呼ばなくても聞こえていますよ」
「骸さん、わたし、おかしくなってしまいました」
「どこがおかしくなったのです?」
「わからないです、ぜんぶ・・・わたしおかしい」
「僕にはおかしいように見えませんが」
「骸さん、骸さん」
「なんですか?」
「そばに、行きたいです・・・」

 部屋の入り口で立ったまま話していたわたしに、骸さんはどうぞ、と両手を広げた。わたしは一歩、そしてまた一歩と少しずつ骸さんのそばへと足を踏み出す。するとすこしずつ 苦しみ がなくなっていくのが分かる。これが 苦しみ という言葉で表せられるものなのかわたしには未だにわからないけれど。

「骸さん・・・、」
「どうしました?早く来なさい」
「骸さんの、腕の中に・・・ですか?」
「もちろんです。こちらを向いて、僕の足の上に座りなさい」
「骸さん、の・・・」
「そうですよ」

 クフフフ、と骸さんが笑った。骸さんとわたしは恋人同士でもないのに、わたしがそんな風にして座っていいのだろうか。あぁでも、少しずつまた消えていく。わたしの 苦しみ と言葉にしていいのかわからないものが。わたしが骸さんの目の前に立つと、骸さんはわたしの腰をぐい、と引き寄せた。わたしはその勢いで骸さんの首に抱きつくように腕を回した。するとわたしの中にあった 苦しみ と言葉にしていいのかわからないものが、するすると、消えていく。わたしがまた「骸さん、骸さん、骸さん」と何度も骸さんの名前を口にすると、骸さんが一回だけ「」と呼んでくれた。

「骸さん、わたし・・・おかしくなってしまいました」
「さっきも聞きましたよ」
「骸さんの傍に、いないと・・・なんだか、おかしくて」
「どうおかしいんです?」
「わからない、です。でも・・骸さんのそばにいないとわたし」
「クフフフ」
「おかしい、ですよね・・・。すみません、骸さんの上に座って」

 骸さんの上からどけようと腰を浮かせると、骸さんの腕が強くわたしの腰を引き寄せた。

「クフ、おかしくなんてありませんよ」
「え・・・?」
「それでいいのです」
「骸、さん・・・?」
は僕がいないと生きていけない。それで良いんですよ」

 すると骸さんはわたしの耳に口を寄せて

「そうじゃないほうが、おかしい」











何故なら僕には、こんなにもあなたが必要なのですから





20070731
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