「あー、むなくそわりぃ…!」

シリウスがコップを机にたたき付けると、大きな音がした。
その音にピーターがびくりとしたが他の2人はただ普通に食事をとっていた。

「あの女、監督生になってからまたうるっさくなったんじゃねーの?」
「彼女は正義感が強いからね。ああ、そんなところも素敵だ」

そうジェームズが恍惚の表情で言った。
そんなジェームズを横目でシリウスがギロリと睨んだ。

「こっちだって監督生がついてんだ。リーマスがいいって言えばいいだろ、なあ?」

静かにスープをすすっていたリーマスは静かに皿を置いて言った。

「あまり目立つ真似はしないでくれよ」
「なんだよ、リーマスまで!」
「あっ。エヴァンズたちだぞっ」

誰に言っているのかジェームズは目をキラキラさせてみんなを見た。
周りはノーリアクションだ。

「一緒にいるのはMsかな」
?あのチビ?あんなヤツグリフィンドールにいたっけ?」

シリウスがほおづえつきながらさもどうでもよさそうに言った。

「うわ。最悪シリウス。同じ学年だぞ!」
「まじかよ?あんなにちっこいんだぞ?どう見ても年下だろ」
「日本人らしいよ。小柄だよね」

ジェームズはどうでもよさそうに言う。
今にも立ち上がりそうな勢いでエヴァンズの姿を目で追っている。
ようやく近くまで来た時、ジェームズが「はーいエヴァンズ!一緒に食べない?」と呼びかけた。
シリウスは冗談じゃないぞとジェームズをにらみ付けたが、彼は赤毛の少女しか見ていない。

しかし、まあ、当然と言えば当然だがエヴァンズは見向きもしないですーっと横を通り抜けていった。
後ろについているがこっちとリリーを見比べて落ち着かない風にしている。
ちょこちょことエヴァンズの後を追っても友達の側の席に着いたようだ。



「Msが居たから恥ずかしかったのかな?」
「…ポジティブだな、お前」

ジェームズは落ち込んだ様子もなくパンにかじりついた。
まあいつものことだ。いちいち落ち込んでいたらジェームズの身がもたないだろう。

その向かいでピーターがなにやらそわそわしている。
リーマスに何かいいたげにしているが、言わないほうがいいのか迷って居るみたいだ。

「どうしたの?ピーター」

その様子に気づいたリーマスがピーターに問いかけた。

「あ、あの…たいしたことじゃないんだけど…」
「何?」
「えっと…あの、Msが持ってた本、見た?」
「いや?それがどうした?」
「その本の表紙に…狼が書いてあったように見えたんだ」

頬杖をついてスープをかきまわしていたシリウスが目だけでピーターを見た。
あとの2人もそろってピーターに注目した。
その視線に戸惑ってかピーターは焦って訂正した。

「み、見間違えかもしれないよっ…?」
「ま。例えそうだったとしても、なんでもないただの本さ。リーマス、Msと接点ないだろ?」

ジェームズがにこやかに言った。
リーマスはうなずきかけてはっとした。

「うん…あ、いや…?」
「え、何?話したことあるの?」
「いや、でも特に親しくしたわけではないよ。彼女が前消灯時間に遅れて、その時にちょっと注意しただけだよ」

「へえ、なんだそれだけか。っていうか彼女、素で遅れてるんだね」

ジェームズが独り言のように言った。

「素でって?」
「ああ、知らない?彼女前監督生やってたディックのファンだったんだ」
「ディックってあの卒業した」
「そう。それでディックに会うために門限破ってたって噂だよ。かわいいよね」
「ふーん…どうでもいいけど」
「あそ」

ジェームズがふふんと鼻で笑った。

「ていうかなんでそんな事知ってんだよ。気色わりーな」

シリウスがチキンにフォークを刺しながら言った。

「ふ。恋の攻略は情報収拾から始まるんだよ、君」
「そんな関係ねーヤツの情報なんか拾ってどうすんだって」
「まあ、彼女の話はついでの情報さ。でも結構有名だったよ?4年間も片思いだったって」
「4年!?よくそこまで好きでいられるな」
「プレイボーイの君には理解できないだろうね。純愛のすばらしさは…僕を見習えよ」
「うるせーよ。お前だってこの前ハッフルパフの女子とわいわいしてただろーが」
「あれはただの友達だよ。僕にはエヴァンズだけさ」

白々しいことを言う…。
シリウスは最後の肉を口にほおりこんで呆れた目でジェームズを見ていた。











「月と狼?」
「うん、覚えてない?」
「なんか聞き覚えはあるけど…」

サリーはこの本のことを覚えていないみたいだ。
大きな月に浮かぶ狼のシルエットの表紙。
リリーがその本のページをパラパラとめくっている。

「当たり前だけど読めないわね」

リリーが笑って言った。
全て日本語なのだから仕方がない。
挿絵だけを見て回るだけで内容を思い出そうとしているみたいだ。

「素敵な挿絵ね。幻想的だわ」
「ほんとー!きれいだね」

リオナがにゅーっと顔をつきだして本をのぞき込んでいった。
私もちらりと横目でどのページを見ているのか確認した。
お腹の空いた狼が小鳥たちをつかまえようと息を殺してチャンスをうかがっている。
そしてその時、狼は小鳥たちが自分の話をしているのに気づく。
小鳥たちは、狼はこの森すべてから嫌われていると、おもしろおかしく歌っていたのだ。

…そして狼は…



「ねえ!もう一回読みたい!この話!」

リオナは突然そんな事をいいだした。

「リオナこの話嫌いじゃなかったの?」
「なんか見たら読みたくなってきた」
「なんだそりゃ…」

まったく気まぐれ少女だ。

「私ももう一度是非読みたいわ」
「あ、私もー。もう忘れちゃったし。聞けば思い出すかも」

リリーもサリーも声をそろえていった。
こんなに人気者になるなんて思いも寄らなかった。

「あ、でも、翻訳した紙もう家においてきちゃったよ?」
「じゃあもっかいやればいいじゃん!今なら楽勝でしょ」
が読み聞かせてくれるってのはどうかしら?」
「あ、それいいねー!リリー頭いー!けってい!」
「ちょ、ちょっとまってよ!」
「何、、だめなの?」
「いや、別に私はいんだけどさ…」
「ようし、ならいいね!じゃあ今晩談話室で!」
「わかったわ。楽しみにしてるわね」
「おっけー」
「お…おっけー」


なんて強引な人たちなんだ。
いや、別に嫌なわけではないのだけど、
読み聞かせなんてはじめてやるし短いといっても絵本のように数分で読み終えられる訳じゃないから、
私は長い間読み続けなくちゃいけないわけだ。
もう朗読の域に達するわけだ。
いくら親しい友達の前だと言っても緊張もするだろうし、

…疲れるだろうなぁ

(2010/2/27)
  
2style.net