私立バサラ学園高等部。
多くの部活などの特待生を募集し全生徒の8割が何らかの技術が一般人に勝っている。(といわれている)
部活も活発でほとんどの部が全国出場を果たしている。(らしい)

…が、しかし!


特待制度によってこの学校の半数以上、いやその殆どが部活動の選手、メンバーとして活動し
部員数が多いにも関わらずマネージャーが居ないという部活が多数。(多分)
マネージャーになれるのは、スポーツ特待でない生徒または学問特待の生徒のみ。(そうだったんだ)
その全てがマネージャーに回るわけにもいかず、マネージャーは不足するばかり・・・
かと思えば、人気のためたくさんのマネージャーがいる部活もあり。
この不平等を解決すべく、生徒会は考えた!

マネージャーを一つの団体にして各部に派遣しよう!


そしてできたのが、教育課程外活動管理アシスタント部…略してアシ部なのだ!








美女と野獣と狸の恋









今日も第二小体育館には威勢の良い柔道部の声(特に豊臣先輩の)が響いている。
その声(特に豊臣先輩の)に合いの手のように竹中先輩の声が割ってはいる。

「いいよ、秀吉!そうだ、その調子だ!いけっ、そう!良い感じだね!」

…丁度ドラマや漫画で見たモデルのカメラマンみたな竹中先輩。あなたは一体どんな役職なんだ。
私は未だに竹中さんが柔道をしている姿を見たことがない。
しかし実際は誰もが認める柔道部副部長。
なんであの人なのか?疑問に思った私は吹っ飛ばされ壁にたたき付けられやる気を失っている3年生に訪ねてみた。

「しかたねーよ。あいつを口でまるめこめれる奴なんていねーし」

ああ、なるほど…。





素直に答えてくれた3年生の傷を手当てしながら私はほっとしていた。

もちろん副部長の事ではなく、今こうして私が部員の手当をしている事にだ。
あんだけ引っ張っておいて、ただのマネージャーかよ。と思いはしたが、
未確認生物を探し歩いたり、宇宙人未来人超能力者と遊ぶことを目的とした部活でなくて心底安心した。
派遣先は部長の坂本先輩のご厚意によって(もしくはねねさんの熱烈な視線によって)柔道部に決まった。
あの2人を除けば部員みんないい人だし、汗くさい以外に文句は無い。

それに、ねねさんも居るしね。


部室でドリンクの用意をしているねねさんの陰がちらりと見える。
部長副部長が変態であろうと、私はねねさんが居るからここでやっていられるというものだ。


「はい、終わりました」
「さんきゅー…」

そう言うものの、また部長ズに立ち向かわなければならない事に肩を落としのろのろと進んでいく。
がんばれ勇者!覇王なんかに負けるな!正義は勝つ!

「次俺やってくれよ」
「はい、今やりま…」

声がかかって慌ててその人の方を見ると、素敵な笑顔の男の子が立っていた。
私が一瞬とまどってしまったのはその男の子が制服のままだったり、差し出された患部がただのアオタンにしか見えなかったりしたから。

「……アオタンは自然治癒でお願いします」
「これさー、伸びしたところに丁度ヤクザが居てさーぶつかっちゃって」
「ぶつかっただけでアオタンできるんですか!?」
「いや、ぶつかった時じゃなくてその後なんか殴ってきて」
「それで、それだけで済んだんですか…凄いですね」
「嘘だってw」

「…………」

なんなんだこの人…。


「あの、柔道部員ですか?」
「いや、違うぜ」
「部外者は立ち入らせないようにときつく言われていて…」
「いーのいーの。俺常連だから」

部活の常連ってなんだ。もう部員でいいんじゃないのか。

「それより、あんた新入り?」
「あ…はい」
「かわいーね。俺2年の前田慶次。あんたは?」
「1年のです」
ねー。覚えとく。ところでねねは何処?」
「部室ですが…」
「ふーん。ありがとーな!」
「あっ、ちょ」

そう言って前田くんは私に背中を向け手を振って部室に向かって歩き出していった。
でも本当にいいのかな、常連とはいえど部外者は部外者だし…

私が遠ざかる前田くんの背中を見ておろおろしていると、
その背中が叫び声と共にふっと消えてしまった。


「うをぁああ!」

ドサアッ


床を見ると二つの屍が折り重なって倒れている。
私が駆け寄るまえに、誰かが2人の側に寄ってきた。

「性懲りもせずまた来たのかい」
「ぐっ…これはやりすぎじゃねえ?」

つぶれている前田くんを見下ろして竹中先輩は不適な笑みを浮かべた。

「君はそうしてつぶれていた方がお似合いだよ」

「あっ、秀吉!お前だろこれやったの!」


竹中先輩の背後に豊臣先輩の姿を見つけてこころなしか嬉しそうに前田君は言った。
豊臣先輩は名前を呼ばれぎくりとしたが、素直にこちらに歩みを寄せた。

「慶次…だから言っただろう」
「あのなあ。恋ってのは障害があるほど燃えるもんだぜ?」

前田君が笑って言う。
逆に豊臣先輩の表情は少し暗くなった気がした。
前田君はねねさんが好きなのか。ですよねー。私も好きです。

「所で。君には部外者は一切立ち入らせるなと言ったはずだけど?」
「えっ…あー、ごめんなさい」
「そいつは悪くねえよ。俺が勝手に入ったんだ」

前田くんがすかさずフォローをしてくれたが、

「そんなの言い訳にはならないよ。お仕置きは後でする。取りあえず前田のバカは出て行って貰おうか」

竹中先輩は一言でばっさり斬り捨てた。
お仕置きって…まじですか。
ちょ、ホント私何もしてないのにっ。帰って良いかな…。だめか。

「嫌だね。俺今めっちゃ暇なんだ」

上に乗っかっていた柔道部員を退けて前田君は飛んで立ち上がった。
暇だからって理由で部活動の邪魔をするのもどうかと思うけど…
てかこういう時には顧問が対応するんじゃないのか?てか顧問誰?

「俺を止めたいのなら俺を倒しな。妖怪紫うねうね
紫うねうね…?ふっ。君は高校生にもかかわらずネーミングセンスが小学生並みだね。ロン毛ーイエロー
お前も対してかわんねーじゃねーか!てかそのまんまだし!」

という事でなんでかバトルを始めた2人。
竹中先輩が戦ってる姿を初めて見た…が。
戦況は2年の前田君優勢で3年の竹中先輩はやられっぱなしで結局逆転もすることなく、
竹中先輩は前田君の下敷きになるのであった。
その姿を私と豊臣先輩は止めることなくただただ傍観するのみだった。


「くそっ…」
「10連勝〜♪」
「ふん、これで勝ったと思うなよ」
「なんだ、また負け惜しみか?」
「良いことを教えてあげよう。君の大好きな恋の障害だ」
「…な、なんだ?」

前田くんの顔が少し険しくなる。
あんな事言ったもののやっぱり障害は無い方がいいと心では思っているのだろう。
私も少し気になって竹中先輩の言葉に耳を傾けた。
隣の豊臣先輩が若干慌てた様子だが竹中先輩を止めるわけでもなくただおろおろしている。












「高等部を卒業したら、ねねくんと秀吉は入籍することになった」













「………ははは」


え…?

乾いた笑い声の前田くんの下敷きになっている勝ち誇った顔の竹中先輩。
う、嘘でしょ。そんな早く結婚なんて?
私には未だに彼氏ができたことないのに?

豊臣先輩の顔を見ると、私と目があって豊臣先輩の耳が真っ赤になった。
ほんとなの…?

「入籍って、まだ十代だぞ?嘘だろ、秀吉?」

ぎこちない笑顔で前田君は豊臣先輩を見た。
私から視線を外し前田君と目を合わせた豊臣先輩は、耳からどんどん赤くなって顔を真っ赤にした。
その顔を見て前田君は心底ショックを受けたようだ。

「嘘だ。だって秀吉だぞ!?こんなゴリラだぞ!?
「慶次、それは暴言だ」
「俺はしんじねーからな!」

竹中先輩の上から飛び降りて前田君は叫びながら部室に入っていった。
あ…そこにはねねさんが…。
そうか。前田君は確かめに行ったんだな、ねねさんに。
それって凄い勇気な気がするが、彼の場合は無鉄砲なだけかもしれない。

ややあって、肩をがっくり落とし、この世のどん底でも見てきたのかのような表情で前田君が出てきた。

「すごい、笑顔で言われた…」

そう言うと笑顔を思い出したのか目を手で覆いながら、そのまま体育館を出て行ってしまった。
どんまいです…!

前田君の追悼と新しい門出を祝いながら彼の背中を見送った後、
寝ころんだままの竹中先輩は立ち上がり、手を叩きながら言った。

「邪魔者も消えた。さあ、練習再開だ」


マネージャー用の椅子を竹中先輩にぶんどられて私は床に座らざるをえなくなり、
竹中先輩は前田君との戦いが相当しんどかったのかその椅子に座って休んでいる。
一日に何度も何度も壁に投げつけられている部員達よりはるかに運動量は少ないはずなのに、
誰もなにも竹中先輩に何も言わない。私もそれに習って口を塞いだ。

前田くんが来たせいなのかいつもより機嫌悪いオーラがびしびしと突き刺さってくる。
さっき前田くんが来た最初のときよりもそのオーラは大きくなってる気がする。
もしかして、竹中先輩もねねさんが好きとか…?

それよりもさっき言っていたお仕置きというのが気になる。
今は忘れているようだけど、このまま放置したらいつか思い出してしまうだろう。


「凄くびっくりしました」
「………」
「身の回りに結婚前提のカップルが居るなんて思いもしませんでした」
「…僕は反対だけどね」
「何故です?」
「秀吉は全国大会をねらってるんだ。それなのに恋なんかにうつつを抜かして、2位なんかになったらどうするんだ」
「それでも2位とれるんだ、凄いですね」
「2位じゃ意味無い」
「そ、そうですか」


やっぱり反対なんだ。
その意見の裏には何があるんだろうか?やっぱり好きなのかな?
深読みしすぎかな。恋をしたことのない私の勘はあてにならなそうだ。


「まあ…確かに、ねねさんと豊臣先輩じゃ、美女と野獣ですね」

私が冗談めかして言うと、竹中先輩は私を一瞥して何も云わなかった。
うまくなかったですか…すみません。

「竹中先輩は好きな人居ないんですか?」

話すことが無くなって乾いたぞうきんを絞るくらいの力で勇気をふりしぼって話し出したが
こんな話に竹中先輩が乗ってくれそうもないと言ってから気づく。


「…興味ないな」
「竹中先輩もてそうですが」
「ああ。毎日1人は告白してくるよ。とても鬱陶しい」
「凄いですね」
「当然だろう。僕がそうでなきゃ他の奴らは一生女友達すら出来ない」

ちょっと話続いたけど、なんかむかついてきた…が、我慢するんだ私。
お仕置きを思い出させちゃいけない。
もう先輩と話したくなくなったけど、話をとぎれさせちゃいけないっ。



「こ、恋はいいと思いますよ。むしろやる気に繋がると思います。ねねさんも応援してくれるからって、豊臣先輩もがんばりますよ」
「…勝ちのみを純粋に望まない者が頂点に立てるものか」
「1位とか、頂点とか、そんなに大切なんですか?」
「確か君は合唱部だったね?」
「あ、はい」
「それなら1位の大切さを君が解るわけがない」

…すみません。
けど一応合唱部にもコンクールというものがありまして…。
と、言ってみても竹中先輩は何も返してくれそうにないから言うのをやめた。


ドリンクを作り終えたらしいねねさんが、ドリンクを抱えて部員達にかけよっていく。
まっさきにねねさんは豊臣先輩のもとにかけよって、鈴蘭のような笑顔を向けながらドリンクを渡している。
豊臣先輩はその笑顔に少し頬を紅潮させてぎこちなくドリンクを受け取っていた。
その様子が微笑ましくてにこにこしていると隣からまたあのオーラが私の横っ腹をぶっ刺した。

「馬鹿馬鹿しい」

「…まっまあまあ。ほら、お二人ともとっても楽しそうですよ?」

といったらギロリと睨まれた。

部員達にドリンクを配り終えたらしいねねさんはこっちに竹中先輩が居るのに気づいたらしく
人なつこい笑みを浮かべ近づいてきた。

「竹中君、はいどうぞ」
「…ああ、ありがとう」

目を合わせないようにしながら、竹中先輩は乱暴にドリンクをねねさんから奪い取った。
よーく目をこらしてみたがツンは見あたってもデレが見あたらない。
やっぱり勘ははずれたみたいだ。
竹中先輩は一口のむとボトルをねねさんに返した。

「不味い」

先輩の言葉にその場の空気が凍った。
ねねさんは心底ショックを受けた顔をして、竹中先輩は言い切ったままふくれている。

「ちょ、竹中先輩っ。せっかく作ってくれたのに!」
「いいの、ちゃん。作ったの初めてだからしょうがないわ」
「えっ、初めてなんですか?」

竹中先輩のまだ9割以上残っているドリンクの容器を回収しながら、
少し寂しそうな表情でねねさんは言う。

「これ、秀吉くんが作ったの」
「そうなんですか!?」

豊臣先輩って亭主関白そうだから、そういう事全くしなそうだったから驚いた。
でも初めてか〜、可愛いところもあるんだなと思っていると、
竹中先輩がねねさんの手からものすごい速さでボトルを奪い取った。
そしてそれを一気に飲み干すのを私たちは唖然として見ていた。



「良く味わってみるとおいしいよ」



「何で!?」



私はいろんな事についてツッコミを入れた。
何故今更そんな見たこともないくらい爽やかな笑顔で言うのか。
ドリンクを味わうもなにもみんな同じ味じゃないですか。
何故豊臣先輩の名前で飲む気になったのか。


しかしひねくれた心を持たない純粋なねねさんは、
満面の笑みに変わって竹中さんから空のボトルを貰うとスキップするように向こうに行ってしまった。
多分豊臣先輩に報告するつもりなんだろう。


「じゃ、僕も回復したし、行ってくるよ」

気持ち悪い笑顔のまま竹中先輩は立ち上がった。


私はその笑顔を見ながら固まって、空いた椅子に座ることも忘れていた。






恋愛フラグどころか変なフラグが立ってることに私は気づきたくなかった。



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相手慶次で書いたつもりがいつの間にかハンバーグ寄りっぽくなり、
最終的には竹豊ぽくなりましたが、そっちの方向にはもちろんもっていきません。作者もそっちの免疫はないです…。
けど  竹中→秀吉→ねね←慶次
の四画関係が好きだったりします。主人公居なくてもよくね?というのは禁句でございます。
題名ですが、慶次を動物に例えたとしたら狸しか思いつきませんでした。
慶次ってなんなんでしょうか?想像力のない私に誰か良い動物教えて下さい。
2style.net