どうやら家が燃えたようです 後編





「あ、あの!本当にいいんですか?」
「ん?何がじゃ?」
「見知らぬ親子をそんなにすぐに居候にさせてもらっても…」
ちゃん慎重になりすぎだよー。人の親切は素直に受け取らないと、ね?」
「父さんは黙ってて!」

きっと睨むと父は押し黙って団子をほおばった。


「はっはっはっは!心配はいらん。部屋は腐るほど余っておる」
「でも…っ」
「そんなにわしらが信用ないかね?」
「そういうわけじゃないですけど…」
「ならいいではないか!そうじゃ、佐助。さん親子の歓迎の宴を開くぞ!酒を用意しろ!」
「は。承知」

お茶を持ってきてくれた人はさっさとどこかへ行ってしまった。
確かに、悪い人には見えないけど…でも。

ちらりと、幸村と名乗った少年の顔を見た。



ござるだしな…。



「なんだ、殿。団子は嫌いか?」
「えっ?あ、いや食べます、食べます」

私は団子を急いで頬張った。それを見て幸村は満足そうに笑った。

「うちの団子は旨いだろう」
「う、うん」

もちろん、私は団子ソムリエでも団子批評家でもなかったからそんなのわかるわけ無い。
むしろ今は何食べても味なんてわからない。
そんなことより早く家に帰りたい。あ、家無いんだった。 orz

「では、早速部屋を案内させよう。父上殿はわしが案内致す。殿は幸村が見てやれ」
「は!承知致しました!」

どっかの金持ちの執事かよ。
元気よく返事をすると幸村は立ち上がった。
私もつられて立ち上がり、ずんずん進んで行ってしまう幸村の背中を追いかけた。

しかし大きな家だ。しばらく歩いて行くうちに、元の部屋に戻れるのか心配になる。



「ここを使って良いぞ」

案内された部屋は一人の部屋にしては少し広すぎると思った。
でも、いろいろ荷物とか増えたら狭くなるのかな。

「ここと向こうと其処の部屋だ」
「え?3部屋?」
「もっと必要か?ならば…」
「じゃなくて!3部屋もいらないよ。この部屋だけでいいって」
「そうでござるか?」
「うん」

さすが大豪邸。部屋のあまり具合が違う。
普通なら父子で一部屋という、最悪だけど仕方ない部屋割りになるはずなのに。

「それでは一応空けておくから、必要ならば使ってくだされ」
「わかった。ありがとうございます」

丁寧にお礼を言うと、罪悪感が押し寄せてくる。
やっぱり悪いよ、この家の人に。でも今更どうすることもできないし。
断れたとしても何処にも行けないし。


「その制服、バサラ学園のものであろう?」
「あ、うん」
「某もバサラ学園なのだ!偶然だな」
「そうなんだ」

どこか上の空でこの人の話を聞いている。
はあ、行く先真っ暗。
いや、実際はこんなに親切にして貰って明るい未来なのだろうけど、私としては真っ暗だ。
だってさ、

どう見てもこの家の人は(頭とか)おかしい気がする。
だってあの母親の紹介した人だぞ。絶対どっかに落とし穴があるはずだ。


ただでさえ訳のわからん人間の父親とフリーダムな母親を持って、
ござる!とやけに心の広い武田さんが加わったのなら、
私の人生はどんどんエキサイトなものになるのがありありと見えてくる。

是非とも普通に生きさせて欲しい。


「どうかしたか?」
「えっ。あ、いや」
「では、夕飯の支度が出来たら呼ぶ。それまでくつろいでくだされ!」
「うん。わかった」


くつろげと言ったって…。

ガランとした何もない部屋に取り残され、私は困惑した。
いったい何をしろと。寝ろって?

私ははっとしてポケットに手を突っ込んでケータイを取り出した。
バタバタしていてそういえば何もチェックしていなかったな。
メールのアイコンが点いている。私はメールボタンを押した。



差出人:ユリコ
件名:大丈夫?
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火事だって?大丈夫なの?
明日は学校来れる?



ユリコってのは中学から一緒の友達だ。
クラスが別々になっちゃったけど、行き帰りは一緒に行こうねって約束してる。

私は返信に大丈夫、明日は…わかんない。と打って返した。
大丈夫じゃないけどさ。



メールも終わってやること無くなった。
どうしよ。家の中でも探索しようかな。色々位置覚えたいし。
私は誰も見ていないけど、何故かこっそり部屋を出て廊下をうろうろしていた。
人の気配はほとんど無いけど、全く無いわけじゃない。
向こうの方で足音が聞こえたり、話し声が聞こえたりする。


あ、いい匂いだ。

今夜のご飯かな。
匂いを追って来てみると、台所に着いたみたい。厨房っていうの?
結構広くて棚に食器がいっぱい詰まってるのが見える。

そこには、一人の人が忙しく働いていた。
その後ろ姿を見てピンと来た。あの時お団子持ってきたお兄さんだ。

「何か用ですか?」

その人はずっと私に背を向けていたのに、話しかけられてびっくりした。
私?私に言ってるんだよね?

「あの、何か手伝いましょうか?」
「え?いいよいいよ。客人がそんな事しなくても」

見つかってしまったら仕方ない…というかむしろ見つからなくても入ってく気満々だったけど、
私は台所に足を踏み入れた。

「客人じゃないです。今日から居候です」
「え?」
不本意ですが、そういう事になりました。宜しくお願いします」
「居候…。そうなんだ。全く、お館様は何の相談もなく決めちゃうからなぁ」
「すみません」
「いやいや、君のせいじゃないよ。俺は猿飛佐助。君は?」
です」
ちゃんね。じゃあ野菜でも切ってもらおうかな」
「はい!」


良かった。やることが見つかって。普通そうな人も見つかって。
私は気合いを入れて手を洗うと包丁を握った。











呼ばれた部屋に行くと、そこには長机の上にグツグツ煮えた鍋があった。
おいしそうな匂いだ。私は父と向かい合わせ、幸村と隣になって座った。
といっても幸村とは大分距離があるけど…隣と言っておこう。

「部屋は気に入りましいたかな?殿」
「はい、広くて感激しました」
「そうかそうか。ならば良かろう」

幸村の向かいの武田さんが豪快に笑った。


「失礼しまーす」

その時、おひつを持った佐助さんが部屋に入ってきた。
おひつなんか初めて見た。なんか格好いい。

「ちょっと待ってくださいよ。お茶碗ください」

幸村は待ってましたといわんばかりに大きなごはん茶碗をつきだした。
私は武田さん、父さんの後に自分の所に置いてあった茶碗を差し出した。
ほかほかのごはんが目の前にある。
ああ、これでよかったのかな。乞食になってたらこんなご飯をもう食べられなかったかもしれない。
昨日だって買い込んだ安肉しか食べれなかったし。

「良いか佐助!」
「はいはい」
「「いただきます!」」


幸村と武田さんが叫んだ。と同時に鍋に箸を突っ込んだ。

「じゃあ僕らもいっただっきまぁす」
「いただきます」

私と父も手を合わせた。
佐助さんがやけに空いていた私と幸村の間に座り、こうして小さな宴会が始まった。

最初のうちは成人3人が酒を飲む飲む。
明日父さん仕事だよね、大丈夫かな。でも意外に酒には強いから…と思って油断していたのが悪かった。


食事が始まったのが午後7時。午後10時過ぎには3人ともただの酔っぱらいと化していた。
最初から止めておけば良かったと今更後悔しても意味がない。
やけに大きくなっている酔っぱらいの声と酒の匂いに眉根を寄せた。
なんかさっきから幸村の声が聞こえない…


って寝てるし!


おいおいマジかよ…いつの間に。私も一緒に夢の世界に連れて行って!
行きたくても酔っぱらい3が私を足止めする。やけに絡んでくる。
なにこのおっさん達。

幸村ずるい幸村ずるい幸村ずるいと心の中で連呼しているうちに真夜中12時。


まず最初に佐助さんが寝てしまって、次に私の父と武田さんが鯉のぼりについて語りながら眠っていった。まだ4月だよ。



私以外全員ドリームキングダムへと旅立ってしまった。

いや…私はどうすれば?


勝手に部屋に戻って寝ていいのか?
いや、布団のある場所とか聞いてないしな…。みんなもこんなところで寝かせておいたら風邪引いてしまう。
一人夢の世界に行きそびれてしまったよ。
ちくしょう。なんで私がこんなめに会わなくちゃいけなんだよ。


「幸村、起きて。幸村!」

酔っぱらってないからすぐ起きるだろうと思って幸村を起こしにかかる。
肩叩いたり、くすぐったり、ほっぺ引っ張ったり、頭の後ろの尻尾みたいなのを引っ張ってみたりする。

「ん…」
「幸村?」
「ん…んははははっ!」
「なんだ寝笑いかチクショウ」

起きない予感はほっぺのあたりで気づいていたけど(尻尾はやりたかっただけ)なんでこんなに起きない?
しかも机につっぷしてる姿勢で寝づらくないのか。

「もー!私にどうしろって!」

ゴロンゴロンと横たわる4体の男ども。
私は眠い目をこすりながら、幸村の他の3人も起こそうとしたが無駄だった。
蹴っても殴っても上でジャンプしても起きやしない。


「チクショウ!一人でどんな落ちにすればいいんだよ!」




寝よう!私も寝てしまおう!
雑魚寝なんて!寒い駅のホームで寝るよか100倍ましだわい!



その日の夜は案外ぐっすり眠れました。


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いきなりまとめに入るのはご愛敬です。
みんな口調、性格わかりません。
武田家に居候なんて、なんて、なんて、破廉恥…!
やめようかと思ったけどドキドキ同棲ライフの夢を捨てきれなかった私を責めないでおくれorz
最後の主人公の落ちとかいうセリフ細かいことは気にしないでください(待て
落ちてないしね。
…そういえば学園パラレルのはずなのに主人公学校行ってない(ノ゚ο゚)ノびっくり
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