「今日俺の家に来い」

「えっと…、嫌です」



CAKE





全くこの学校にはバカばっかりか!

謎の上から目線の伊達君は突然やってきて突然そう言った。
親指が彼の後ろを指しているがそっちに家があるんだろうか。
結構な確率でなさそうだ。

「えっなんでだよ?」
「なんでって、そんな急に言われても…」

てっきり私が二つ返事でもするのかと思ってたような顔で驚いているが、普通こんな場合断られるのが7割だ。
まあ、急でなくても893の家になんか近づいたりはしないけど。

「ちょっとでいいんだよ」

ちょ、ちょっとってなに何なのこのキモさ…。
伊達くんのごり押しに顔を青くしながら、私は後ずさった。

「い、いや、でも伊達くん部活は!?」
「今日は休む」
「それだけのために!?」
「別に一日くらいさぼったってかまわねーよ。せっかく休んだんだから来いよ!」

「でっでも…」

「来 い よ !」













閑静な住宅街を伊達君の後ろについて歩く。
…結局来てしまった…。なんて強引にマイウェイ。
酷い自己嫌悪と伊達嫌悪にさいなまれて私はめまいと吐き気を感じた。

ああ、ヤクザなんてそんな私には関係なかったのに…。
テレビの特番で見て“へー、こんなのマジでいんのかなー”と呑気にリンゴをかじっていた頃が懐かしい。
伊達君はどういうつもりなんだろう?
私に要りもしない金を貸して利子を雪だるま式に積み上げさせて私から全てを奪い取るつもりなのか。
はたまた私を娶ってなめたらいかんぜよにするつもりなのか。
どっちにしろ未来は暗い。だめ、わたし、泣いたらいかんぜよ。

ふと伊達君の足が止まった。
ついに着いてしまったか…。

「着いたぜ」

私は思い顔を上げて、伊達君の家を見た。
お花がいっぱい飾ってある素敵な門の向こうに、白い壁と赤い屋根の可愛らしいお家が建っていた。

「???」

はこんらんした。

…ここが学園で噂のヤクザのお家?
なんか和風のどでかい家を想像していたんだけど、普通すぎて腰が抜ける。
ラブコメドラマで使いそうな素敵なお家である。

いやいや、見間違えかな。私違う家見てるのかも。
…表札に『伊達』って書いてある…。

「こ、ここ?」
「そうだけど?どうかしたか?」
「い、いや。なんでもないです」

今までのイメージのせいか、お花いっぱい夢いっぱいの門扉を開ける伊達君に違和感を感じて仕方ない。
今見ている現実にぞっとしながら、私も門扉をくぐった。
伊達君が玄関をあけて、行儀良くただいまと言うと、どたどたと足音がして誰かが駆けてきた。

「おかえりー!今日は早いのね!」
「ああ。部活が休みだった」

休んだんだろ。
やけに可愛らしい声のその人は、ひょっこりと伊達君の向こうから顔を出して私に笑顔を見せてくれた。

「こんにちわー!」
「こ、こんにちわ」

ふわふわした茶髪を揺らした、愛らしい笑顔の人だった。
不良っぽい伊達君には似てもにつかないが、お姉さんだろうか?

「どなた?」

その人が伊達君に小首をかしげて聞いた。

「学校の友達」
「まあ!そうなの!お名前はなんていうの?」
「あっです。はじめまして」
「はじめまして、ちゃんね。私はまーくんのママ!」
「ママですか。はじめまし…」


ママ?

この人が?


私は目を丸くした。
いや、どう見たって20代前半だ。
ヘタしたら10代に見えてもおかしくはない。

「お若いですね?」
「まあ、お上手ねっ!」

照れる仕草も愛らしい。
ピチピチの16歳がなんとなく敗北感を覚えた。




リビングに案内されて、私は手近な椅子に腰掛けた。
清潔感溢れる白いカーテンに心落ち着く薄緑のソファ。
机はレースの敷物、テレビは写真立てや可愛い置物に囲まれている。
清潔感溢れるかわいいお部屋だ。
…伊達くんがこんな家に住んでるっていうのを、学園でどのくらいの人が知ってるんだろう。

「いや、私勘違いしてたよ」
「何が?」
「伊達君はコワイ家系の子だと聞いていたもんだから」
「なんだよ、それ。誰が言ってたんだ?」

伊達君が不機嫌な顔になった。
これ名前言ったらまた2人の仲が悪くなりそうだ。
でも言うけどね!

「百合子」
「あのブタ女まじぶっ殺す」

ごめん、百合子…。
でもこれは自分で蒔いた種だからね…。
私はそれにまんまとひっかかってたわけだ。
親友の言葉に惑わされるなど我ながら情けない。

「こら、そういう言葉使いするからそんな事言われるのよ、まーくん!」
「そうよ、まーくん!」
「うるせーよ!までまーくんとか言うな!」

確かに伊達くんの容姿や言動も、少しは要因だったりするだろう。
お母さんはこんなに可愛らしい人なのに、なんでこんな感じに育っちゃったんだろうな…。

「…小十郎は?」
「小十郎さんなら、まーくんがお友達連れてきたって言ったら張り切ってお菓子の用意してたわ」
「あっ私ならお構いなく」

小十郎さんって誰だろう。
もう一人家族がいるのかな。

「久しぶりにまーくんがお友達連れてきてくれたんですもの。ゆっくりしていってちょうだい」

伊達ママが嬉しそうに言った。
確かに伊達君は友達少ないらしいし、それは本当なんだろうな。

「本当に、何年ぶりかしらね。記憶が合ってれば小学校の時幸村くんが来たとき以来かしら」
「! 幸村が?」

そっか。確かに2人とも学園の幼稚舎から居るっていうし、実は結構仲良いんじゃないのかな。
伊達君は幸村をライバル視してるみたいだけど幸村は普通そうだし。
伊達君がちょっと変われば、2人って結構仲良くなれるんじゃないかな。

「ゲームがなんとかって言って喧嘩になって、2人とも大泣きして、幸村くんが“二度ときとうない”って言って帰ってったわね…。あの時はショックだったわ」
「よく覚えてるな」

一体何が…?

「確か、幸村くんが人生ゲームのルーレットを回したら勢い余って吹っ飛んで、まーくんの顔面に直撃しちゃって、怒ったまーくんが自動車保険を破って大げんかになったのよね」
「ホントによく覚えてるな」

許してやれよ…幸村はそういう子なんだよ…。
小さい頃の思い出話を微笑ましく(?)聞いていると部屋のガラス戸が開いた。

「甘味をお持ち致しましt………!?」

お盆にケーキとジュースを乗せて現れたのは、がたいのいいオールバックのおっさんお兄さんだった。
私はそのお兄さんの顔に熊に襲われたような大きな傷があるのを見て顔を青くし、
お兄さんの方は私を熊でも見るような目で見ている。

「ま、政宗様…そちらの方は一体…?」
「だから、友達だけど」
「し、しかし…その方、おおおお女子ではありませんか?」
「そうだけど?」

そのお兄さんはまたショックを受けた顔でよろめいた。
しかしジュースが零れるすんでの所で持ち直した。

「も、も、もしやとは思いますが…まさか、お二人は恋「それはないです」

「は、はは…。そうですか。それはいやはや失礼」

冷や汗を拭いてその人はお盆を机の上に乗せた。
お盆の上にはまさかこんないかついお兄さんが運んできてくれたなんて思いもしないような可愛らしいお皿に乗ったかわいらしいケーキがあった。

「わあ、おいしそう!」

まーくんのママが手を叩いて喜んだ。

「そうでしょう。駅前にできたケーキ屋から買って参りました」
「知ってるわ〜!すごくかわいらしいお店でしょ?」
「はい、とても華やかなお店でございました」

…ていうか…え?行ったの?あの店に?この人が?この顔で?
私はぎょっとしてケーキとお兄さんを交互に見た。
駅前のケーキ屋なら知ってる。レースとお花でぶりぶりなお茶屋兼ケーキも販売しているっていう店だ。
そこに…行ったの?このお兄さんが?この顔で?
どう見てもケーキとお兄さんは繋がらない。どうしよう。
お兄さんがあのふりふりの店でケーキを買っている姿なんか想像できない。
お兄さんの主食はどう考えても肉…です…。

いや、その前にこの人は誰?
敬語を使っているけど、家族ではないの?

「あの…すみません、こちらの方は…」
「あっ。そうそう、紹介するわね。うちの家政夫をやってもらってる小十郎さんよ」

家政夫?この人が?この顔で?
佐助さんと同じ感じって事か。なかなか苦労してるんだろうか。この顔で。
…なんか、こういうのにいちいち驚かなくなった私が嫌になる。

「申し遅れました。小十郎ともうしまs……はっ政宗様!!袖にクリームが付いておりますぞ!」
「oh」

小十郎さんははじけるように立ち上がり、どこかに消えたかと思うと濡れフキンを持って戻ってきた。
ものすごい剣幕で伊達君の袖に付いたほんのちょっとのクリームをしつこく拭い取った。

「Hey,小十郎。もういい!」
「大切な制服に匂いが残ってしまいますぞ!!丁寧にぬぐわなければ!!」
「いいって言ってんだろ!しつこい!」
「しつこいと言われようが小十郎は政宗様のため、全力を尽くし、命をかける所存でございます!」
「…!小十郎…お前……。よし。いいぜ。思う存分拭きな!Yea!!」


なんなんだこの人たち…。(遠い目)
…でも、伊達君がなんでバカなのか解った気がする。



「まあ、ホントに2人とも仲がいいわねえ」

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私の思う伊達軍って…\(^o^)/
とりあえずまーくん呼びは譲れません。
とても久しぶりになってしまいました。申し訳ないです。
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