フロスティホワイト





「もう12月か…」


壁掛けのカレンダーを見つめて佐助さんがだるそうに言った。
私は何もいわずみかんを頬張る。
こたつにみかんはテンプレートだよね。ちょううまい。

幸村はこたつに入ったまま寝ていて、たまに机からみかんを2,3個奪っては寝ながら食べていた。
行儀の悪い幸村の頭に佐助さんのチョップが入る様子を私はぼやっと見ていた。
遊びに来ている伊達くんもそんな事は気にもかけず、本格的に寝に入っている。

誰も何も言わないが居心地が悪いことはない。
私もみかん食べてだらだらテレビを見ているだけだ。

幸村が叩かれた頭をさすりながら起きあがった。
文句をたれながらみかんを食べる作業に戻る幸村。


「年賀状かかなくちゃね。ちゃん何枚書く?」
「年賀状…もうそんな時期なんですね。つい最近入学式だった気がします」
「実際にそうなのかもね」

冗談にならない冗談をいう。幸村が乾いた笑い声を上げた。
私と伊達君は笑わなかったが伊達君は聞いているのかも定かではない。

頭の中で年賀状を送る相手の顔を浮かばせた。


「去年の年賀状あればよかったんだけどな〜。火事で燃えちゃったし…」
「とりあえず名前あげてけば?今年できた友達もいるんじゃない?」

「そうですね…」



まず百合子…


で、私の口は止まった。



「…どうしたの」
「…よ、吉坂百合子ちゃん」
「うん。その子はわかったよ」



「そういえば、殿が他の者と仲良くする姿、あまり見かけませぬな」

幸村が余計な事を言う。
ぎくりとして幸村を睨んだが幸村はみかんに夢中で私の視線に気づかなかった。


ちゃん…?」

佐助さんの哀れみに満ちた目が私に注がれた。
そんな目でみないでくれ…私は広く浅くじゃなくて狭く深くがモットーなんだ。(言い訳)


「ま、高校はいいとして。中学の友達にも送らないといけないですよね…」
「そうか。殿には中学の友達もおられるのか。某らは人が増えるくらいでほとんど見た顔ぶればかりだからうらやましいでござる」
「そっか。バサ学ってエスカレータか」
「で、どなたがおられるのだ?」

もう1年も合っていないと顔もぼやーとなてしまう。
名前は多分覚えているから、一人ずつ声に出して言った。

「ミカ、カヨコ、コニシ、シズエ、エミちゃん」
「おお、みごとなしりとりでござるな!」
ほ、ほんとだー。じゃなくて、その4人と…あと、あぁ…えーと高瀬くん」
「男友達?」
「うん。男子のほうだったけど同じ合唱部で」

その話があがると、伊達君が急にむくっと起きあがってきた。


「お前、男子に年賀状とか送んのかよ?」
「え、だって友達だし」
「そいつに気があんのか?」
「なんでそうなる」
「年賀状はそういうもんだろ。じゃなかったら毎年俺にくる年賀状がみんなヤローばかりなわけがねぇ
「年賀状にそんな風習が…知らなかった」


「本当でござるか?」


口を挟んだのは幸村だった。
佐助さんはばかばかしそうに私たちの会話を聞きながらみかんを食べている。

「某には来るぞ。女子から」
なんだとっ!?

伊達君がうろたえた。
私は幸村に多少なりとも人気があるのは知っていたから、年賀状にどんな風習があったとしても不思議には感じない。
そしていざ近づいてみると暑苦しくて誰もが告白する前に萎えてしまう、という事も私は知っている。

しかし、幸村は話の流れをちゃんと理解してないな。



「幸村、今の話だと、その年賀状は一種のラブレターって事だよ?」
「ラッラブッ…き、聞いたことはあるが…確か恋文の類…なんと破廉恥な、年賀状!!
「恋文の類じゃなくて恋文ね」

幸村の顔がみるみる赤くなるのがわかった。
いつもの事だし予想はついていたから何も言わない。


「違う…真田、違うぞ。お前に限りその法則はなり立たない」

なんでだよ。
伊達君が焦っているのがまるわかりだ。でも幸村は例の如く気づかない。


「何故だ伊達殿!?何故某に限る?」
「それはな、真田…お前が………靴のかかとを踏むからだ
「何!?それはまことか?!」

なんか考えて思いついた先がそれか。どんな思考でそこにいきついたんだ伊達政宗。


「ああ。あまりにもお前が踏むから、靴のかかとがしびれをきらしてお前を呪ったんだな」
「なにっ…。では昔佐助が言っていた“靴が泣いてるよ”というのも本当か!?」
「ああ。靴は物言わんがちゃんと心があんだ」
「てっきり、佐助のうわごとだとおもっておったが…。それは靴殿に申し訳ない事をした」
「ああ。今度からはちゃんと靴をはくんだな。見ててイライラするんだよ

「伊達くん。その辺りにしとけば…」

最終的に自分の意見だしな。
あまりにも幸村が不憫になってきたので私は伊達君を止めた。
恐らく伊達君の幸村の嫌なところランキングには靴のかかとを踏むところがだんとつ1位を飾っているのだろう。
確かに私も気になるところだが、伊達くんの気にし具合に比べたら鼻くそみたいなものだ。

幸村が靴のかかとへの謝罪の言葉を唱えていると、
テレビを回しながら佐助さんがけだるそうに口を開いた。

「ていうかさ。話戻るけど、異性からの年賀状がラブレターだって事は伊達の旦那は全くモテてないってこと自爆してんの?」



ピキッ

「む、今なんか割れた音が」
「気にしないで幸村」


伊達君の目に影が落ち、ギラギラと光る眼光が佐助さんに跳んでいく。
しかし佐助さんは華麗なスルーでテレビの芸人に少々微笑んだ。

「…俺様のファンは奥手な大和撫子ばかりなんだよ…」
「ファンって、はははそれマジで言ってんのかよ
「っせーな、猿!てめえこそいい年こいて彼女いねーじゃねーかよ」
「いますー。彼女くらいいますー。ただ彼女は俺よりももっと好きな人が居て今そっち行ってるだけで」
「それ彼女っていわねーよ!」


子供っぽい喧嘩が始まったところで私は本格的に年賀状を送る人数を割り出していた。

中学の友達6人、百合子、あと…
伊達君には送るべき?元親先輩とか、慶次先輩とか?
うーん、でもあの人達の事だから多分年開けてから書くとかしそうだな。送らなくてもいいか。
ねねさんには送ろうっと。あと部長も。
従兄弟とか、祖父母、おじさんにも送った方がいいかな。

よし15枚あれば足りそう。



「俺には当然くれるよな?」

新たにみかんに手を伸ばしながら伊達君が言った。

「ああ…うん。もちろん。あの、佐助さん、やっぱりハガキ16枚もらえますか」
Why なんで1枚増やしたんだよ」
「いやぁ、あの、なんだろう」


「真田も、今年はくれるよな?」

すっかり不機嫌になった伊達君の目は次に幸村に向けられた。

「今年は?幸村去年出さなかったの?」

私が素朴な疑問を投げかけると幸村はみかんのしぶを向きながらぼそぼそ呟いた。

「…ん?そうだったか?…あーそういえば。そうそう。政宗殿の家はその年喪中だと思って」
「なんでそう思ったのかはしらねえけど、勝手に身内殺すな
「今年はしっかり出しますぞ。今年は丑か。丑…ウシ…牛……スキヤキが食べたい」
「いいねぇスキヤキ」
「食べたいなー」
「なー」

「自分で作って食べれば…」



高校生3人のあからさまなおねだり声に、
佐助さんはテーブルに肘をついてテレビのチャンネルを回しながら無気力な声で言った。
いいねーと佐助さんの同意を期待していた3人は肩を落とした。

だらだらずるずる時間が過ぎていく。
今年は色々騒がしかったけど、たまにはこんなのもいいかもしれない。




来年もまたこんな1年になりますように。




「…あ、雪」

「まじ?」

「嘘」

「……なんだよ…」



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伊達が英語喋らなくてごめんなさい幸村が普通の喋り方でごめんなさい
なんであんな言葉遣いなのあの2人

来年も宜しくお願い致します。
2style.net