変態…いや、変態ではない。
変態ならきゃーだのわーだの言えるのだが、変態ではないのだ。
彼はとても純粋…いや、純粋な変態と言って良いのか?それはそれで危険だ。
私はどうすればいい?







REASON







氏名、年齢、住所、電話番号、体重、身長、視力、座高、好きな食べ物、嫌いな食べ物…

ルーズリーフ1枚に乱雑な文字がギュウギュウに詰められている。
どれも見覚えのあるデータに私は唖然とし、目の前の眼帯の青年と紙を見比べた。
伊達君は、ごく整然としていてむしろ少し誇らしげな顔にさえ見える。

「こ、これは…?」
「見てわかんねぇのか?お前のデータだ」
「なんで、です?」
「調べた」

家族のプロフィールを作るから、お家の人に色々聞いてきてねー なんていう小学生の宿題をやってきて得意げな子の様だ。
しかし、私は伊達くんの家族ではないし、伊達君は小学生でもない。

つまり…この行為はストーカー的変態的奇異な行為である。
という事を私は気づき始めたが、伊達君は純粋に宿題をやってきて僕えらい!の状態だ。
なんと声をかけてよいものか解らない。

「なんで…調べたの?」
「忘れたのか?前の時、お前の友達が“の事何も知らないのに、親友とか馬鹿じゃないの!”みたいな事いってただろ?」

妙な声真似付きで伊達君が説明してくれた。
なるほど…。それで本当にやってきたわけか。
ここまで細かく調べられ、体重まで知られてしまって嫌悪感が募っていたが、
それを聞くと伊達くんの意外な健気さ、いらない健気さが伺えてますますきついことも言えない。
いや、まあ例え変態的な意味で調べられても(怖くて)きつい事は言えないけど。




「どうだ?これで親友って言ってもいいだろ?」
「えっと…」

まだそんな話してたのか、もうほんとどうでもいいから。

「わ、解りました」
「マジか?」

ここで下手に断って恨みをかうような事はしたくない。
あくまで噂であって真実は知らないが、暴力的な家系の子らしいし。





「あの…でも、一つ聞いてもいいですか?」
「What?」
「なんで私なんですか?」

伊達君に会った頃から思ってたことだった。
伊達君は顔だけならいわゆるイケメンと呼ばれる類の生き物で、
私は極力客観的になるよう見たとしても中の中。地味と呼ばれる生き物である。
フラミンゴと鳩の差だ。
いや、イケメンが美女と一緒にいなくてはならないという事はないし、
イケメンが皆美女好きというのも先入観すぎるけど…。

なんの特徴もない私に、何故伊達君は声をかけようと…しかも面倒なデータ収集までするのか。


面食いというわけでもないが、私も一人の思春期の少女であるわけで、
男の子にこういう行動をされると少しくらいドキドキするわけだ。
そんなオレンジ乙女な私の思考回路に伊達くんの温度差のあるセリフが滑り込んできた。




「だって、むかついたから」




「…?」


何が?


「真田幸村、アイツ今まで一人も女子の友達居なかったくせに、急にアンタと仲良くなりやがった」
「???」



それで、なんで私と親友になるの?


「なんかむかつくだろ!真田のくせに!って」


それただの嫉妬だよ!
あんたも女友達いないのかよ!この学校どんだけ男女で分裂してんだ!


…理由は普通じゃないにしろ、少しは理由がわかった気がする。
つまり、伊達君は幸村がむかついたから、幸村から私をとってやろうと思ったわけですね。
思いが完全に私をスルーしている事に気づいた私は不幸者です。
そんな事など知らず、思い上がって人気者気分に浸ってたほうがまだマシだったかもしれない。




「という事で、真田に見せつけに行く。OK?」



子供かお前は!
私の答えを聞く気などさらさらなく、伊達君は一人で勝手に真田幸村の元に向かうべく歩き出してしまった。
仕方なく私も彼の背中を追う。てか伊達君は幸村の場所は知ってるのか?


「…おい、真田はどこだ?」


「………………。」











校門の側で幸村が立っているのが見えて、伊達君と2人で歩くのが辛くなっていた私は思わず小走りになった。

「おーい!幸村っ」
殿。遅いではないか。どうなされた?」
「ごめんちょっと…」

何故かスクワットをしながら話す幸村にツッコミを入れることもせず、
私は自分の後方をちらりと見て伊達君を確認すると、また幸村に視線を戻した。
幸村は私の視線に気づいたのか、伊達君を確認するとスクワットをやめた。

「おお、これは政宗殿!」
「Hello、真田幸村」


幸村はいつもの子犬みたいな笑顔で、伊達君はにやりと不適な笑みで互いに挨拶をかわした。
仲が悪いとは見て取れない2人だ。というか知り合いだった事に驚いた。


「しかし、何故殿と?」
「それは…
「そりゃ、決まってんだろ」

幸村の素朴な疑問に私が答えようとすると、早速伊達君が割って入ってきた。


「俺はの、BestFriendだから」


なんで私中心の言い回しにしたのかは理解しかねるが、特に意味はないだろう。
変な関係を勘違いしないで欲しい。


「べす…?…そうか、それは良きことだな!」

幸村がちゃんと理解してるか不安だ。



「ふっ。せっかくできた友達なのにわりいなあ?」
「なにがでござるか?」


すっかり得意げになっている伊達くんは、こっちからしてもなにがでござるか?という感じだ。
そんな事されて悔しがるのは友達の少ないあんたぐらいだ。

仲がいいように見えて心が通じ合っていない2人を見つつ、
決着の無い自慢大会(参加一人)に付き合わされては困る。
どうしようか…

そうだ。
私はおもむろに携帯を取り出した。

「あ!佐助さんからメールだ。帰りに野菜買ってきてだって幸村」
「本当か?何の野菜でござる?」
「あ、読むから。読むから画面のぞかないで。えっと…ほら、クロボー
クロボー?クロボーって野菜じゃ…」
「なっなんでもいいでしょ!急がないとお店仕舞っちゃうから行こう幸村!じゃあね伊達君」
「了解いたした!では政宗殿、失礼致す…あれ、殿今日の夕飯はおでんと佐助が…


「お…おい、待てテメェら」

ぐだぐだだったけど、伊達君がぼけっとしている間に私たちは上手く走り去った。
良かった。これなら伊達君も別に怒ったりしないだろう。

その後クロボーを買って家に帰った。








翌日。

朝はなんとか伊達君とでくわさずに済み、お昼まで順調に生活していたが、昼休みにそれはやってきた。
終業のチャイムを聞き終わると、早速お弁当を食べようと私は自分の鞄を探った。


「ん?」

ふいに呼ばれて振り向けば、そこには眼帯の青年がいらっしゃった。

「あ…」
「よう」
「あっ、き、きのうは…あの…ごめんね。急いでて」
「・・・」

伊達君を出し抜くなんて余裕、余裕…と思っていた今までの私にさようならするときが来たみたいだ。
目の前のむすっとした機嫌の悪そうな伊達君を目の前にして、私の血がさーっと引いてく音がした。
おこってらっしゃる…

伊達君は無言でそこらへんの椅子を引き寄せて私前に座った。
当然のようにお弁当を広げると、無言のまま食べ始めた。


「食べねぇのか」


いや、机が半分占領されてて…どいてくれないかな。
なんて言えもしないので、私は急いで弁当を広げた。
伊達君は何を考えてるのだろう。この後、じわじわと私を追いつめるつもりなのだろうか。
幸村が居れば空気が和むものだが、生憎彼は今クラスの男子にさらわれ、何処かでお昼をしているはずだ。
ちらちらというクラスメートからの視線もピリピリして痛い。
居心地が悪すぎる。弁当だけに集中しないと身が持ちそうにない。


「俺も馬鹿じゃねえ」

ふいに伊達君がはなしかけてきたので驚いて箸を止める。
しかし伊達君は食べながらも続きを淡々と話した。


「なんで避けるんだよ?俺が嫌いか?」



気まずい質問をされてうつむく。
沈黙する私を伊達君は凝視した。
もしキライでもキライとは言いにくいし、好きでもないので好きとも言えない。
優柔不断とよく言われるが、これは理解して欲しい感情だ。



「さ、避けてなんかないよ」
「じゃあなんなんだよ?」
「昨日は本当に………クロボーはおいしかったです」
誰もクロボーの話してねえよ。…はあ、話すときも、近くにいるだけでもお前は顔色変えるじゃねえか…俺が気づいてないとでも思ってんのか」



「嫌いとかじゃなくて…あの…伊達君、怖いし


机の縁を見つめながら、か細い声で言った。
え?何?聞こえない?と言われたら、違う答えで返そう。この緊張感は半端ない。



「怖い?」

聞こえてたか



「Why?」

何故といわれましてもー。
鈍色な噂しか知らないし、その風貌…眼帯もいかにもって感じだし。
どうしてだろう。
同じ眼帯でも某クロワッサンヌさんは動物にじゃれすぎて怒った動物にやられたとかいう平和(?)なイメージが沸いてくるのに
伊達君の眼帯は、乱闘中に…というイメージが沸いてしまう。
声もドスきいてる気がするし、強そうだし。
挙げればいくつでも挙がりそうだが、言えるわけもなく口ごもった。



「怒らねえから言え」

「じゃあ…あの、その眼帯とか…」
「眼帯が怖いのか?変わった奴だな」
「いや、眼帯が怖いんじゃなくて、怪我…?喧嘩とか?」
「ちげぇよ、これは、なんだっけ、水疱瘡的な」
「水疱瘡で失明するの!?」
「いや、なんかそんな感じの病気」
「そ、そうなんだ。…あ、あと…その、なんていうか、あなたの……………疾走感が怖い」


うん、色々オブラートにつつんでみたものの、意味がわからなくなった良い例だ。
取りあえずオープニングムービーを参照してください。
けど馬鹿正直に言って気分を害すよりも、意味不明であやふやでよくわからん空気になった方がまだマシだ。


どんな反応が返ってくるのか冷や汗をだらだら流しながら待っていると、




「Okey,Coolな俺と一緒に自分が居ていいのかって不安になってるんだな。
 安心しろ。今のアンタは確かに外見的にはこの俺とは釣り合わないかもしれないが、
 外見なんていくらでも変わるしな。それにこの俺がいいっつってんだ。文句なんて誰にも言わせねえ」




もう、そういう事じゃないわ


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キャラ同士がなんて呼び合ってるのかが一番悩ましいです。
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